コンゴ民主共和国でのボノボ調査

トラッカーが集めてくれた食痕や糞。
貴重なサンプルとなりました。

 2017年3月4日から3月21日まで、コンゴ民主共和国のMbali地域に行ってきました。私はここで主にボノボの感染症の調査をしています。ボノボはチンパンジーと同じく私たちと最も近い「進化の隣人」である大型類人猿です。アフリカ・コンゴ民主共和国の限られた地域にのみ生息していて、絶滅の危険性が指摘されています。
 感染症を調べるといっても人間のように直接ボノボに問診するわけにはいきません。森の中で双眼鏡を使って観察するだけでは限界もあります。そこで森の中でボノボを追いながら、食痕(口の中の粘膜が取れます)や糞など彼らの「落とし物」を拾い集めて分析することで、感染症や寄生虫などが人間からうつっていないか調べています。
 ところが今回、フィールド調査中の事故で足を負傷してしまいました。そのため森の中を歩き、自分の目でボノボを観察し、彼らの健康状態を確認することはできませんでした。しかし、現地で毎日ボノボを追い続けているトラッカーと呼ばれる人たちの協力により、サンプルを集め、分析することができました。今のところ調査対象の14個体のボノボに大きな健康上の問題はないようです。しかし、いつ感染症が流行するかはわかりません。継続的に彼らの健康状態をチェックすることが必要です。また近いうちにMbali地域を訪れたいと考えています。
 なお、本調査は三井物産環境基金活動助成の支援のもと実施されています。
(学術部 キュレーター  新宅 勇太)

森の中でくつろぐボノボ(2016年9月撮影)。今回の渡航ではこんな光景に出会うことはできませんでした。こうした姿がいつまでも見られるように、彼らの保全活動を続けていきたいと思います。

2017年4月1日更新
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