形態学者のひそかな楽しみ
 日本モンキーセンターの学術部には6名のキュレーターが在籍しています。専門分野や対象とする動物はそれぞれに異なります。私の専門分野は形態学です。霊長類研究者のあいだでは「ホネ屋」と呼ばれたりします。とくに身体を支え、動かす骨と筋肉に興味があります。

 霊長類の体の大きさやかたちはさまざまです。世界サル類動物園を歩いていると霊長類の多様性を実感できます。かたちが異なっているのは、くらしが異なっているからです。かたちから進化や環境適応を読み解いていくのが形態学の世界です。

 形態学はある種、職人技の世界です。私自身、何百体もの骨を観察し、解剖をおこなって、かたちを見る目を養ってきました。かたちを読む「文法」を身につけるようなものかもしれません。

 「文法」が身につくと何ができるか。たとえば、生きている動物の骨が見えるようになります。体内で躍動する骨と筋肉を見て、私はひそかにほくそ笑んでいるのです。

 学術部発信のコラムでは、メンバー各自の専門を活かして多彩な話題を提供していきます。私のコラムでは骨の世界を垣間見ていただこうと思っています。お楽しみに。
(学術部 キュレーター  高野 智)

ワオキツネザル(左)とワオキツネザルの骨格(右)。中の骨が見えてきましたか?



2017年4月25日更新
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