ヒマラヤがはぐくむ神秘の生物多様性
世界の屋根、ヒマラヤ。
ブータンからインドへ向かう飛行機の窓から、見渡すかぎり氷河に覆われた山々を観るたび、その迫力に圧倒されます。極限の険しさで生命の存在を拒むかのような、そそり立つ氷の壁。吸い込まれそうに青い、真空の空。
人間の目から見ると、豊かな自然とは対極に感じる景色ですが、それを美しいと思うのも、また人間の好奇心。そして、それを裏付けるように、この神秘的な山々は、インド亜大陸に達する広大な山麓に、多くの動植物をはぐくんでいるのです。

今の地球上で、その恩恵をもっとも受けている国の一つが、「国民総幸福」の国、ブータン。サイズは九州を少し大きくした程度ですが、世界有数の生物多様性を誇り、特に鳥類の豊かさは700種類と、比類ないレベルに達しています。

今回は、ゴールデンラングールなどの固有種の保護のみならず、幸福度の柱として自然との共存を実践するブータンから届いた、ユニークな野生動物の姿をお楽しみください!
ブータンの首都ティンプーにも、春になると渡り鳥がやってきます。写真は街の真ん中を流れるティンプー川を飛ぶアカツクシガモ
ブータン政府のユニークな取り組みとして、国中に103頭が生息していると推定されたベンガルトラの保護のため、各国立公園の長に、保護区内のトラメンバーを移譲する儀式が執り行われました。 

例えば南部のロイヤル・マナス国立公園では、14頭の識別されたトラのリストが、”顔写真”とともにテンジン・ワンチャク所長に贈呈され、国立公園は彼らの”避難所”として重要な役目を果たすことになったのです。 

過去2年間で、1,000台以上のカメラトラップが仕掛けられ、トラのモニタリングが行われました。中には4,000m以上の雪の積もる地域で撮影されたトラもあり、ブータンは世界で唯一、ユキヒョウとトラの共存が確認された国となりました。これも、ヒマラヤの神秘の奥深さを物語っています。
ブータンでは殺生を嫌うので、大きな川が縦横無尽に流れる国土でも、まだまだ魚類の分布は知られていません。

マナス川の流域に位置するロイヤル・マナス国立公園では、最初の魚類調査が2015年に行われ、現在は特に釣りで人気が高い、アロワナカープの回遊調査が、ラジオテレメトリーを使って行われています。観光立国を目指すブータンでは、これらの大型魚の釣りも、新しいエコツアーメニューとして取り入れる可能性を探っています。

もちろん、釣れた魚は川に戻す、「キャッチ・アンド・リリース」が原則。これも彼の国ならではの試みです。
(国際保全事業部 岡安 直比)
2017年8月15日更新
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