サルの赤ちゃん、ヒトの赤ちゃん② なんて未熟なヒトの赤ちゃん!

モンキーセンター勤続13年目になる私には、小学5年生の娘がいます。モンキーセンターに入社した翌年に出産しました。出産前には自治体が開催する子育て講座などにも参加し知識は得ていたつもりでしたが、いざ自分の赤ちゃんの成長を見てみると、「ヒトって“変”!」と思うことばかり。そのいくつかについて、お話ししたいと思います。

まず、くにゃくにゃで太っていること。ヒト以外の霊長類の赤ちゃんは、生まれたその日から自分で首を持ち上げ、乳首を探します。種によって多少の違いはありますが、ほぼ自分の力で母親の体にしがみつくことができます。ヒトの赤ちゃんが未熟なことは知っていましたが、こんなにいつになっても首がすわらないなんて!!自分でつかまっていてくれたら楽なのになぁと、何度思ったことでしょう。

自分でつかまることができるチンパンジーの赤ちゃん



よく泣くヒトの赤ちゃん


次に、なんでこんなに泣くのーー!です。ヒト以外の霊長類の赤ちゃんは、ふだんはほとんど鳴きません。母親が嫌がって引きはがすようなことがあれば「キャキャッ」と鳴くことはありますが。それにひきかえ、ヒトの赤ちゃんのなんとうるさいことか。抱いて揺らしながら寝かしつけ、そーっとベッドに置いたのに、フッと目を開けてギャー!なんてことがありますよねぇ。

最後に、「食物分配」です。娘がまだ1歳にもならないころ、なんだったでしょう、今まで娘が食べたことのないものを食事に出したことがありました。そこで0歳の娘がとった行動が、「先に母親に食べさせる」でした。まだ不器用な手でむんずとつかむと、私の口にむりやり押し込もうとします。諦めて私が食べると、次につかんだ食べ物は自分で食べ始めました。そもそも、自分から相手の口に食物を運ぶような積極的な食物分配は、ヒト以外の霊長類には見られません。さらに「食べられるものかを試す」としか思えないタイミングで母親に食べさせるなんて、、、。

曾祖母の口に食物を運ぶヒトの赤ちゃん

そんな驚きを与えてくれた娘も、もう小学5年生。母親の私は服装にまったく無頓着なのに、最近何やらしきりにおしゃれをしています。学校の先生、近所の友達など、さまざまな人と関わりながら、両親には思いもよらないような発想をします。親と子が似て非なるものであることは、ヒトもサルも同じですね。
(学術部 キュレーター  赤見 理恵)
2017年8月25日更新
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