サルの赤ちゃん、ヒトの赤ちゃん③ その種らしく育ってほしい
 チンパンジーのマモルが3才になって1か月ちょっと経ちました。生まれた時にはとても弱弱しく見え、ちゃんと育つか心配したのはいつのことやら、最近では群れのオスたちのディスプレイを真似するように、周囲のものを叩いたりジャンプしたり、男の子らしいやんちゃぶりを発揮しています。


母親のそばで遊ぶ約1歳のマモル
 しかし、ただ好き勝手に暴れているわけではないようです。なんといいますか、「場を読む力」にも長けているのです。それを実感するのは、特に来園者の多い土日です。賑やかな来園者がいる時、一緒にくらすオスのツトムは群れを守ろうとディスプレイを始めます。ジャンプしたり周囲のものを蹴飛ばしたり、力強さを見せるディスプレイの時に、うっかり近くにいると危ないのは明らか。そこでその予兆を察するや否や、マモルは安全な母親・マルコの胸に避難します。一方で、ツトムが「ディスプレイを始めそうで始めない時」があります。ツトムが毛を逆立てで体をゆすっているとき、そのあとディスプレイが始まるのか、始まらずに収まるのか、私にはわかりません。そんな時はマモルの動きを見ます。ツトムがディスプレイを始める前には、マモルはすぐにマルコの胸に避難しますが、始めずに収まる前には、マモルはツトムの近くでリラックスしたままなのです。

(左写真:母親のそばで遊ぶ約1歳のマモル)
母親以外のオトナのメスと遊ぶ2歳のマモル
 モンキーセンターでも昔は「命を助けるため」と言って赤ちゃんを人工保育することがありました。しかし今では、赤ちゃんはお母さんが育てるのが大前提になっています。母親が育てられない、授乳できないといった時には一時的に人工保育をすることもありますが、少しでも早く両親や同種のなかまと一緒にくらすことができるように工夫しています。

(右写真:母親以外のオトナのメスと遊ぶ2歳のマモル)
 その種らしく育ってほしい。その種らしい行動を見せてほしい。動物園という限られた環境ではありますが、飼育員、獣医師、キュレーターなど、それぞれの立場から彼らのくらしをサポートできるよう努力しています。日本モンキーセンターの動物福祉の取り組みへ、今後もご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
(学術部 キュレーター  赤見 理恵)
2017年9月10日更新
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