「骨屋」の骨コラム① コロブスには親指がない?
 オナガザル科コロブス亜科のサルはアフリカとアジアに分布しており、歯や消化管に葉を主な食べ物とすることと関連した特徴をもっています。日本モンキーセンターでも、アフリカ館とアジア館でコロブス亜科の仲間を見ることができます。

 アフリカ館にはアンゴラコロブスとアビシニアコロブスの2種がいますが、かれらを紹介するときの定番ネタのひとつが「アフリカのコロブスには手の親指がない」というもの。ふつう霊長類の手足には5本の指がありますが、アフリカのコロブスはその例外だというのです。コロブスの学名も親指がないことに由来しています。


アンゴラコロブスの手
 たしかに生体の写真を見ると手の指は4本です(写真上)。では中の骨はというと、手のひらの中に小さいながらもしっかりと親指のつけ根の骨(第1中手骨)が存在しています(写真下)。骨でいくと、親指は「ない」のではなく「痕跡的に小さくなっている」のです。

 ではどうしてコロブスの親指が外からわからないほど小さくなったのかというと、よくわかっていません。頻繁にジャンプをするので着地の邪魔にならないようになくなったのだ、というような説があります。しかし同じような運動適応をもちながら、アジアのコロブス亜科にはたいてい親指があります。わたしたちは生き物の形を合目的的に解釈しようとしがちですが、一筋縄でいかないこともたくさんあるのです。
(学術部 キュレーター 高野 智)


写真:アンゴラコロブス(上)とアンゴラコロブスの右手の骨(下)。手のひらには親指の付け根の骨がある。
2017年9月25日更新
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