<特集> アフリカの大地を走る
2018年2月、アフリカ中央に位置するコンゴ民主共和国のMbali地域にてボノボの調査をおこなった。この記事をご覧の方々には調査地MbaliについてはMbali Mbaba Misatoの連載でおなじみだろう。これが私にとって7回目の調査となったが、今回初めて首都キンシャサから約760kmの道のりを車で現地に向かった。ここではその道中を少しだけ紹介したい。
道が舗装されているのはキンシャサからおよそ160kmまで。残りの600㎞は未舗装の赤土の道を進む。ドライブといえるような楽なものではない。ひどくデコボコした道を突き進んでいく。あちこちに水たまりができている。そんな道を急がないと、とスピードを出して走っていくものだから、車はひどく揺られ、頭などあちこちぶつける羽目になった。
サバンナの真ん中を、赤い道が続いていく。
キンシャサを出発して3日目の朝、恐れていた大雨が降った。赤土の道は、雨が降ると泥沼と化す。車がひとたびはまってしまえば抜け出すのは容易ではない。予感通り、我々の車は何度も泥沼にはまってしまった。こうなると大変である。泥に埋まったタイヤを掘り出し、石や木や草を敷き、車を押したり引いたりを繰り返して、車を泥沼から救出する。すぐ脱出できたこともあったが、場所が悪く4時間近くかかったこともあった。
完全にはまった車。このときは脱出に3時間以上かかった。
3日目は結局5回も車がはまってしまった。最初のうちは記録と思って写真も動画もとっていたが、繰り返すうちにそんな気もなくなってしまった。この日は車が走っている時間よりも、泥沼にはまっている時間の方が長くなった。夜が明けてからも車は4回泥沼に突っ込んだ。そのたびに通りかかった現地の人たちに助けてもらいながら、キンシャサを出発して4日目、日が落ち暗くなってようやく、Mbaliへとたどり着いた。 当初は3日で着ける予定でいたから、丸1日、余計にかかったことになる。
これで船、飛行機、車と3つの手段でMbaliへ行ったことになる。1時間の飛行機の旅と違い、車の旅では窓の景色をじっくり見ることができる。船旅も1日半かかるので景色を眺める時間はあるが、コンゴ川沿いの景色しか見ることはできない。キンシャサとMbali、直線距離は実は250kmほどしかない。道が整備されていないので、ぐるっと大回りをする必要があるのだ。しかし、4日がかり、大回りの車の旅だからこそ、見渡す限り広がるサバンナから森が少しずつ大きく深くなっていくようす、そしてその周りにある現地の人々の暮らし、自然と人がかかわる多様な環境をあらためて感じることができた。
手前にはサバンナ。遠くに森が広がるのが見えた。
Mbali Mbaba Misatoにもあるが、とにかくこの国は一筋縄ではいかない。まだまだ書き切れていないハプニングが次々におこった。しかし旅の目的は車での冒険ではなく、あくまでMbali地域へ行って、ボノボを観察することである。このコラムの最後にMbaliのボノボの最新動画をご紹介したい。
(学術部 キュレーター 新宅 勇太)
(学術部 キュレーター 新宅 勇太)
2018年5月15日更新
関連キーワード:アフリカ、調査研究、ボノボ
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