リーフモンキーの体重はいくら?
 飼育員に求められるスキルのうちの1つに、飼育個体の体重を推定するというものがあります。この情報は、飼育個体への給餌飼料を設計する際に必要な情報となるだけでなく、獣医が整腸剤や抗生剤などの薬量を決める際にもまた不可欠な情報となります。その推定方法をアジア館のマカク属で例えるならば、「ニホンザルのメスのトネで7.4kgなら、それより少し小さいアカゲザルのメスのローレライは6.5kgくらいかな」と言う感じであり、実際に測定するよりもむしろ、経験、性別や体格、そして同種や近縁種の過去の測定記録から推定することで求めてきました。

 一方、アジア館には、マカク属だけでなく、リーフモンキーと呼ばれるサルの仲間も暮らしています。これらの仲間は、複数の部屋にくびれた大きな胃を持ち、木の葉を主食とするといった、マカク属とは全く異なる特徴を持つサルで、体毛が長く、発酵による胃の膨張があるため、性別や体格からの体重の推定が非常に困難な種となります。さらにリーフモンキーは、その特徴的な胃の構造から、横たえると胃の内容物で誤嚥する危険性があるため、ケガや病気の治療際に測定する程度の記録しか残っていませんでした。加えて、リーフモンキー自体の研究があまり進んでおらず、種ごとの平均体重のふり幅が大きくなっております。そのため今回我々は、リーフモンキーの栄養状態や健康状態をモニタリングするため、本種の正確な体重の定期的な測定を目指し、体重計への馴致トレーニングを行いました。

 これまでにも、リーフモンキーの放飼場に新しい物を入れた事がありましたが、新奇物には触りすらしないことがほとんどでした。そのため、まず体重計を載せる台を作製し、写真のように台の上で餌を与えることで、台に慣れるよう馴致しました。

 当初は、順位の優位な個体が台に乗り、低位な個体は慣れにくいのだろう予想していましたが、むしろ低位な個体のほうが積極的に台に乗って餌を持っていくので、結果として苦労なく台に乗せられることが分かりました。そして、3日間の馴致のあと、今度は実際に体重計を設置し、実際に体重を測定しました。その結果、同じくらいの体格のマカク属と同程度の約6.5kgと考えていたシルバールトンで8kgと、リーフモンキーでは見た目よりも重いことが明らかとなりました。

 今回は、見た目からの体重推定が難しく、かつ情報の少ないリーフモンキーの体重測定の馴致と測定を目指しましたが、個体の給餌内容の評価や栄養状態を管理していく上でも、定期的な体重測定は必須となります。そのため今後は、リーフモンキーだけでなく他種でも、定期的に体重測定することを目標とし、動物たちの健康的な暮らしを目指していきたいと思います。
(附属動物園部 アジア館担当  舟橋 昂)
2018年7月6日更新
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