「あいさつ」からはじまる
 チンパンジーにとってあいさつとは離れていた個体が出会ったときにおこなう相互交渉で、チンパンジー同士が社会的順位を再び確認するために必要な行動です。
 先日、約半年ぶりにツトムとマリリンの同居ができるようになりました。
 ふたりの関係は一言で語れるものではありません。最後に同居したときはケンカわかれに終わってしまい、それからだいぶ時間が経ってしまいました。お見合いのパターンを数種類試し、ツトムとマリリンがお互いに落ち着けるような状況をさぐりました。

 一番良好な関係がみられたのは、ツトムが屋外の運動場にいてマリリンが寝室にいるときでした。屋外へのゲートを5cmほど開け、その隙間越しにお見合いをします。チンパンジーの群れづくりをしていくなかで、何度もおこなってきた同居への最終段階です。マリリンはツトムに対して「手伸ばし」、ツトムはその手にキス。その間「パントグラント」とよばれる呼吸音と結びついた音声(ハッハッハッ・・・というのが近いでしょうか)を発し、一連のあいさつ行動が確認できました。

ツトム(左)のそばで採食するマリリン(右)

 ここから先は彼ら次第。ツトムが離れたところにいることを確認し、ゲートを開けていざ同居開始です。

 お互いに緊張している様子で、あいさつを終えた後は一定の距離を保って過ごしていました。最初の同居は30分ほどと短い時間でしたが、無事に終えることができました。

かがみこみ、あいさつをするマリリン(手前)とそれに応じるツトム(奥)

 アフリカセンターでくらすチンパンジーの群れづくりのなかで、今後カギとなるのはふたりのオトナオス、ツトムとジミーの関係です。2か月間のお見合いを経て、現在までに34回の同居がおこなわれました。

 同居を進めていくなかで、ときにはケガをともなうケンカになってしまうこともありました。しかし、少しずつではありますがお互いの力関係や距離感をさぐり、接し方にも良い変化がみられるようになってきました。
ツトム(手前)の接近に腰をおろし正面からむかえるジミー(奥)

 2014年に生まれたマモルも4才になり、個性豊かな仲間たちのなかでたくましく成長しています。

 チンパンジーがチンパンジーとして、群れのなかで過ごせるように。 これからも一歩ずつではありますが、あいさつからはじまる群れづくりを進めていければと思います。
(附属動物園部 アフリカセンター担当  奥村 文彦)
採食するジミー(左)とそのそばでおねだりをするマモル(右)
2018年8月4日更新
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