ヨザルの群れづくり
「社会的エンリッチメント」とは、他個体とのコミュニケーションを必要とする動物に同種個体、または異種個体を通じて社会的な刺激を与えることです。ザックリ言うと、群れで生活している動物は群れを作りましょうということです。
飼育下では飼育スペースや個体間の関係、年齢や性格などを考慮しながら、動物種本来の群れの構成に近づけていきます。ヨザルは基本的に「一夫一妻制」という、サル類では珍しい群れを作る動物です。野生では一夫一妻以外にも複数頭の群れも観察されています。


ヨザルは南米館で群れ飼育をしていましたが、闘争や繁殖制限のため、バックヤードでの単独飼育を余儀なくされ、早急な飼育環境の改善が必要となりました。そこで、まずは生活環境や社会環境の改善に力を注ぎました。群れづくりを実施するにあたって、複数頭のメスが飼育できるようケージの拡張をおこない、個体間の関係や相性を確認しました。また、ヨザルは夜行性の動物で日中はあまり活発に行動しないため、夜間のビデオ撮影によって行動を記録しました。その結果、オス2頭とメス6頭の8頭のなかで、メス2頭の群れを2ペア作ることができました。メス同士でペアとなったヨザルがどのように行動するかは未知数でしたが、単独で飼育していたときよりも多彩な行動が現れているような気がします。残るメス2頭とオス2頭も順を追って群れづくりを進めていきたいと思います、しかしオス同士の群れづくりは闘争が懸念されるため、メス同士以上に慎重におこなわなければなりません。いまはまだ、主観的な「良い印象」だけですが、具体的にどのような変化が現れるのかを詳しく分析し、そのデータにもとづいて今後の取り組みをおこないたいと思います。より動物の立場に立って、群れ作りや飼育方法の改善を進めていくつもりです。

ヨザルの同居の様子
(附属動物園部 バックヤード担当  阿野 隆平)
2018年8月17日更新
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