常設展のウラ話① 何かが違う!?オランウータンの頭骨
入園ゲートを入ると正面に見えるビジターセンター。ここには常設展や特別展、レクチャーホール、インフォメーションなど、博物館の機能が集まっています。

イベントに参加したり、ミュージアムショップやトイレを利用するために立ち寄ったことのある方は多いと思いますが、常設展をじっくり見たことはあるでしょうか?分類別に剥製標本などが並んだ古めかしい感じの常設展ですが、実はおもしろいエピソードやウラ話がたくさんあります。サポーターのみなさまだけに、そんなウラ話をいくつかご紹介いたします!!

第1回目にご紹介するのは、オランウータンの頭骨標本です。大きなヒガシゴリラの剥製ばかり注目されて、その傍らにひっそり展示されているこの頭骨に目を止める方は多くありません。でも、他の頭骨標本と全く異なる点があることに、お気づきでしょうか?

それは、頭蓋に切った跡がないことです。
骨格標本のほとんどは、飼育個体が亡くなったあと、標本として保存されているものです。骨格標本だけでなく臓器や脳は液浸標本として保存されます。脳を保存するためには頭蓋骨から取り出さなくてはなりません。そのためモンキーセンターの頭骨標本には頭蓋部分に切った跡があるのです。
しかしこのオランウータンの頭骨は、切った跡がありません。それは、どういうことでしょう!?
実はこの標本、下関の海岸に打ち上げられてたのだそうです!!
1958年8月発行の雑誌「モンキー」に、以下のような紹介が掲載されています。
「7月28日、早川頼房氏からオランウータンの頭骨1個が寄贈された。この頭骨は対象3年7月頃、下関壇ノ浦海岸に打ち上げられていたものを同氏が収拾され、現在まで保管されていたものである」

スマトラやボルネオでくらしていたオランウータンが亡くなり、その遺体が川から海にはこばれ、はるばる黒潮にのって下関まで来たのでしょうか。大正3年よりも昔、このオランウータンはどんな森で、どんな生涯を送ったのでしょう。さまざまな偶然が重なって今ここにある標本に、ちょっとロマンを感じませんか?


(学術部 キュレーター 赤見理恵)

2018年9月25日更新
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