新しい猿二郎コレクション
モンキーセンターが誇る民俗資料「猿二郎コレクション」は現在も増え続けています。職員が出張先などで見つけたものが加わることがありますが(以前紹介したコンゴの三猿など)、それだけではなく、センターの職員ではない方からご寄贈いただくこともあります。

先日、青いきれいなサルの陶人形を寄贈いただきました。多治見市の幸兵衛窯で焼かれた最近の作品です。箱には青釉オーナメント「トト」との説明書きが同封されていました。古代エジプトのトト神の像です。この説明にはトト神は知恵を司り、学問や書物に関わる人々に信仰されている、とあります。この人形はヒヒ、とくにマントヒヒの姿をしていますが、さらに調べてみるとこのトト神、鳥のトキをモチーフにされることもあるそうです。また、知恵や学問を司るだけでなく、書記の守護神であったり、時の管理者であったり、楽器の開発者であったりと、多様な信仰を集めた神、だそうです。なぜ「知恵」とヒヒが結びついたのでしょうか。

このヒヒ頭のトト神が存在することは知っていたのですが、猿二郎コレクションでは残念ながら見つけられていませんでした。なのでヒヒを紹介した戌年の特集展示の時も、信仰にまつわるコーナーを作った以前の特別展「サルづくし」でも展示はしたかったのですが、できませんでした。でも次の展示の時にはこの新たな資料が、アフリカでの猿信仰について見せてくれるはずです。


最近寄贈いただいた新しいコレクションとしては、他にも犬山のお土産物屋さんで販売されていたぬいぐるみ、以前勤めておられた方からいただいたテレホンカードや切手など、さまざまなものがあります。共通しているのは「どこのものか」がはっきり分かることです。資料の履歴という大きな情報があることで、どこにでもあるものが博物館の「資料」になっていきます。そして新しい資料が、また新しい人と猿のつながりを見せてくれます。新しいコレクションも、折を見て展示したいと思いますので、お楽しみに。
(学術部 キュレーター  新宅 勇太)


2019年10月31日更新
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