読書の秋 ~民俗資料の古書籍~
モンキーセンターは博物館。モンキーセンターにもこれまでご紹介してきた骨格標本や剥製、そして民俗資料のようにさまざまな資料が蓄積されています。

まだご紹介していなかった資料の1つに,図書資料があります。ビジターセンターにも図書コーナーはありますが、そこに並ぶのは図書資料のほんの一部です。現在モンキーセンターでは和書約6000冊,洋書約3700冊を所蔵しています。そのほかにも、日本各地の博物館や美術館,動物園に水族館,大学などの研究機関の刊行物も毎日のように届きます。年間では600~700点になります。これも資料として整理しています。こうした図書資料のほとんどは、現在犬山市の栗栖地区にある日本モンキーセンターのかつての研究棟に保管しています。


さて,今回ご紹介するのはこれとは別に収蔵されている図書、古書籍です。度々ご紹介してきた民俗資料「猿二郎コレクション」にも,古書籍が何冊か含まれています。昭和期に発行されたものが多いのですが、中には明治期、あるいは大正期に出版されたようなものもあります。

まずは2冊の物語本をご紹介しましょう。1冊は言わずと知れた桃太郎。ここでご紹介している場面は鬼ヶ島での鬼退治の様子で,鎧を身にまとった猿が鬼を押さえつけています。そしてもう1冊は「猿ケ嶋敵討」と題されたもので、いわゆる「さるかに合戦」の話とよく似たものです。カニやハサミなどに、猿が成敗される場面が色彩豊かに描かれています。しかしカニやハサミが顔に張り付いたような登場人物はなかなかにシュールです。桃太郎のほうには、巻末に明治23年発行と書かれています。日本の昔話の中では、猿は善玉にも悪玉にもなります。それだけ、日本人の中には猿に対する多様なイメージが存在するのでしょう。


eb-4688 桃太郎鬼ケ島記全


eb-4689 猿ケ嶋敵討

この猿二郎コレクションには教科書もあります。大正7年に発行された女子理科の動物教科書には、さまざまな動物を紹介する中に「さる」の項目がありました。挿絵は猩々,つまりオランウータンです。この教科書には、「アメリカに産する猿は、何れも尾を木にまきつけて體重を支ふる性あり。」と間違った記述もあり(南米のサルのうち尾で体重を支えられるのはクモザルの仲間だけです)、時代を感じさせます。もう1つの明治21年の尋常読本には単語の例と挿絵としてサルが登場しています。些細な記述でもコレクションに入れる、猿二郎氏の興味の広さと収集欲を垣間見れる資料です。


eb-4678 女子理科新編動物界


eb-4685 尋常讀本

(学術部 キュレーター  新宅 勇太)

2019年11月30日更新
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