特別展の彫刻、「正面」から見るか「右」から見るか?
この記事を書いている時点では日本モンキーセンターは臨時休園となっています。開催中の特別展「タンザニアの精霊・シェタニ マコンデの彫刻と絵画」もご覧いただくことはできません。(特別展のページはこちらから)今回は、その特別展の準備作業中に少しだけ悩んでしまったことを書いてみたいと思います。
2019年12月、今回の特別展に展示している作品を所蔵されているシェタニアートの金山麻美さんのもとに、作品の下見に行きました。どんな作品があり、どのくらいの大きさなのか、輸送するときはどうするべきか、などを考えるためです。どのくらいの大きさかわからなければ現場の図面を書くことはできません。会場に入りきらないと困ってしまいますし、展示品が少なすぎると会場が寂しくなってしまいます。下見の成果をもとに実際の会場のレイアウト図を描いて、展示品の数や配置を大まかに考えます。

下見の時には当然、作品の写真を撮影します。今回は背景用の青い布を持っていき、撮影した写真をポスターやチラシなど、などさまざまなところで使いました。しかしWebミュージアムで使っている彫刻の写真はすべて臨時休園以後に会場で撮り直したものです。なぜそんなことになったのか。それは彫刻の「向き」に理由があります。


右の2つの写真、実は同じ彫刻を別の角度から撮影したものです。この2つの写真をパソコンの画面で見比べたとき、あまりにも印象が違いすぎてこれが同じものだと気づくのにとても時間がかかりました。足が3本あるという特徴をなんとか見つけて、ああこれかと分かったのです。

じつは下見の時、「どの向きで展示するのか」という一番大事な点を失念していました。下見の時は左のように置いていたのですが、これだと肝心なところ見えません。右側、展示場での写真だと、左半分に黄色の目をもつトカゲのような動物が彫られているのが分かります。明らかに下見の時に見逃していたわけです。これらの彫刻に「正面」があるのかどうかは作者にしかわかりません。彫刻を回しながらじっくりと眺め、どの向きに置くのかを展示準備の間に探した結果、このような違いが出てしまいました。本来なら、下見の段階から展示する向きも十分に検討すべきことでした。反省とともに、彫刻のおもしろさを再認識した瞬間でした。


(学術部 キュレーター  新宅 勇太)

2020年4月30日更新
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