特別展のウラ話②:ニホンザル
今回は特別展会場の入り口で紹介している「ニホンザル」のおはなしです。



ニホンザルが犬山に生息しているか、と聞かれたら、答えはほぼNoです。数年に一度、単独で行動するハナレザルを見かけることがあります(モンキーバレイの群れに入りたいのか、周辺に居座ることも・・・)が、ニホンザルの群れは現在犬山には生息していません。

しかし昔からいなかったわけではありません。戦前、木曽川沿いの栗栖地区にはニホンザルの群れが生息しており、李白の詩を彷彿とさせる風景がライン下りの見どころとなっていたそうです。しかし戦時中には姿を消してしまいました。今回の特別展では犬山の自然の変化をテーマにしていますが、ニホンザルもその変化を象徴している動物です。


李白の詩と木曽川


そして実は日本モンキーセンターも、変わりゆく犬山の自然が生んだ産物の一つと言えるかもしれません。戦後、姿を消したニホンザルを惜しんだ当時の名古屋鉄道幹部が京都大学の今西錦司に相談し、野猿公苑としてニホンザルの姿を復活させ、研究拠点もつくることになりました。これが、犬山の地に日本モンキーセンターが誕生したきっかけです。

今後も犬山の自然は、人のくらしとともに変化していくことでしょう。ニホンザルが再び分布を広げることもあるかもしれません。変化のただなかにある今の記録を残していくことは、今の私たちにしかできないことです。この特別展が、身近や野生動物に目を向けるきっかけとなってくれればうれしく思います。

最後にウラ話を一つ。展示するニホンザルの剥製を標本庫で選定している際、苦労したことがあります。それは立派な体格のオスの剥製ばかり多いこと! おそらく立派なオスだと剥製として残したくなってしまうのでしょう。結果、展示ケースに収納するのにかなり苦労することになったのでした。
(学術部 キュレーター 赤見理恵)

2020年7月31日更新
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