ウコンを救ったウロコリス
 日本モンキーセンターでヤクシマザルの飼育管理に私が携わってから10年くらい経つのですが、これまで一度も見たことのない非常に驚くできごとが最近起こりました。

 ことの発端は2019年6月に生まれたウコンの母親(ウシハコベ)が今年の3月に急死し てしまったことにあります。本来、ヤクシマザルの親離れは1歳を越えたあたりからはじまり、徐々に独り立ちしていきます。しかし、ウコンはまだ0歳児でありながら突然母親を失ってしまったのです。親離れをする前に守ってもらえる存在が急にいなくなってしまう、とても危機的な状況です。

ウコン

 この危機的な状況はウコンの命にかかわる最悪の事態です。そんななか、まさかのことが起きました。なんと10歳のオス・ウロコリスがウコンを抱きしめ世話をしていたのです。ウロコリスは誰よりも早くウコンの母親がいなくなったことに気づき、飼育員が対策を講ずる前に行動していたのです。オスのヤクシマザルが子ザルの遊び相手になったり、グルーミングしたりする行動は多くみられます。しかし、オスのヤクシマザルが0歳児の子ザルの母親代わりをする行動は大変めずらしく、私が10年くらいヤクシマザルの飼育に携わってきたなかでも初めて観察しました。




 幸いウコンの離乳が進んでいたこととウロコリスの機転によって、ウコンは6月に無事1歳の誕生日を迎えることができました。ウコンは現在もすくすく育ち、ウロコリスからも少しずつ離れるようになってきました。着実に独り立ちが進んでいるようです。今回、このようなめずらしいできごとを観察することができたのは大変幸運でした。そして、あらためてヤクシマザルの群れの絆の強さを再認識しました。みなさまも固い絆で結ばれたウロコリスとウコンに会いにぜひともご来園ください。
(附属動物園部 アジア館担当  山田 将也)

2020年8月27日更新
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