オスのリスザル大集合!
現在、モンキーセンターでは24頭のボリビアリスザルを『リスザルの島』と『南米館』で飼育しています。群れでくらすサルにはどうしても、だれかとだれかが衝突するときがあります。今までは、ケンカが起きるたびにケガをした個体を群れから離していました。群れから離した先は、南米館であったり、リスザルの島のサブ部屋だったり。そうするうちに、12頭いるオスは3群に分かれてくらしていました。

南米館もサブ部屋も、広い施設ではないので、さすがに頭数の限界が迫っていました。「そろそろ群れの構成を考え直さないとな~。」「リスザルの島にもっと頭数がいればな~。」と考え、準備をはじめていた矢先、メイン群で強いオスのウズラがケガをする事件が起きたのです。

成長してきたハッピーが仲良しのオルガ、ハニワを引き連れて、ウズラに挑戦しはじめたのでした。ケガは致命傷になるほどではありませんでしたが、このままではウズラの居場所がなくなってしまいます。早速編成をしようと進めました。

群れの編成をする上で、まずはオスたちの同居からはじめました。今回はそのお話です。


〈2020年1月29日〉
最初はリスザルの島のサブ部屋にいるオスたちと合わせるところから始めました。

急に一緒にすることはできないので、サブ部屋にいたハマー、ハオ、ハーレー、バンプの4頭をケージに入れた状態で、ハッチ、ウズラ、ハッピー、ハニワ、オルガにメイン部屋から移動してもらいました。
久々に4頭に会ったハッチはケージ越しに顔を見合わせたり、挨拶したりと忙しそうでしたが、他の個体は知らん顔。

まだまだ幼いオルガとハニワはそれどころではありません。 ウズラよりもさらにゴリッゴリのオスたちを前に、ビビリまくり。 ここは地獄だ!この部屋から出たい!と言わんばかりに扉の前で、もがいていました。 これはどうにもいかんな、ということで、2頭はメスのいる元の群れへ戻しました。

ここからオス9頭の群れづくりです。
1頭ずつ合わせたり、全頭一緒にしてみたり、様々な方法で、お見合い・出会わせをおこないました。そこで感じたのは、
「どうもハーレーとバンプが騒ぐことで、ケンカが勃発するな~。」
「ハーレーかバンプがハッチともめると、ウズラが飛んできてケンカになるな~。」
ということでした。

「ハマーは意外とケンカの仲裁をしてくれる。ケンカに巻き込まれてケガしがちだけど、群れづくりのキーパーソンになりそう。」
「ハオはハマーの相棒としておいておこう。」

(3月某日 仲良さそうに見えるけど、実は緊張とあきらめ)

〈2020年4月10日〉
ハーレーとバンプを群れに入れることを今回は見送り、南米館にいるミケ、オリンポス、オーリスとチェンジをしました。

そして、チェンジでやって来た、ミケ、オリンポス、オーリスをケージに入れて、お見合いを始めます。また、お見合い・出合わせの繰り返し。
そこでもさすがハッチ。みんなが代わる代わるハッチに挨拶していました。
ここでも感じたことは
「どうもオリンポスが火種になっているな~。ハーレー、バンプみたい。」

〈2020年5月22日〉
オリンポスも今回の群れ入れは見送り、南米館へ戻ってもらいました。

<b>「ミケはどうも一匹狼タイプだけど、体がでかくて他のオスがケンカをしかけちゃう。サブ部屋の中では毎日一緒にいるんじゃなくて、ケージで過ごして“たまに会うおじさん”ぐらいのポジションにいてもらおう。」<br>
「オリンポスはビビりすぎて、いっつもギャーギャー言っている。群れの中で揉まれて、もう少し大人になってもらおう。」<br>
とこんな感じで、どうにかオス7頭が同じ空間にいることができるようになりました。
</b><br>

(5月某日 写真下:“たまに会うおじさん”ミケ)

〈2020年6月7日〉
最後に、ハニワとオルガにも入ってもらいました。オスたちが頑張っている姿を横でみていたせいか、以前のようなパニックにはなりませんでした。ゴリッゴリのオスたちの中にいった最初の日にも、2人で遊んでいました。

(6月某日 みんなのびのびと過ごすようになってきた)

(6月某日 9頭仲良くミルワームをさがしている)



(7月某日 たまに荒れると落ち着くために重なり合う)

ここまでくるのに獣医さんに多大な協力をいただきました・・・ボソ。

フタを開けてみると、群れに入れることができず、南米館にいった3頭のオスたちは奇しくも同じ年齢9歳。もしかしたら一番血気盛んな年ごろなのかもしれません。
もう少しオトナになったら、リスザルの島に仲間入りできるかな?

今では9頭はサブ部屋から出ることができ、昼間は外で過ごしています。

これからも群れ編成は続きます・・・。
この後は、【最難関】“結束力のかたまり”女子ズが控えています。

ただ、今回の群れ編成は本来の野生とは異なるかたちなので、これが吉と出るか、凶と出るかはまだわかりません。

リスザルの島という、高い木があり、土があり、虫がいて、たまにヘビもいる環境で、少しでも多くのリスザルたちがのびのびと過ごせることを夢見て、今後も葛藤して試行錯誤しながら続けていきたいと思います。

(附属動物園部 リスザルの島担当  田中 ちぐさ)


(9月8日 外に出た日)

2020年9月23日更新
関連キーワード:動物園、群れ作り、南アメリカ