「セブンルール」の裏話
2020年3月25日、広報担当者から「大変です!こんなの来ました。」というメッセージ付きで転送されてきたのは
件名:「関西テレビドキュメンタリー番組へ、田中ちぐさ様御出演依頼の御相談」というメールでした。

名指し~~~~~!
衝撃のスタートを切った取材。

ひたすら、なんで私!?こんなに隠遁生活しているのになんで!?私に密着したところで何も生まれないよ~!!と、わめき散らしたあげく、園長の「業務命令です」という一言で取材決定。

蓋を開けてみれば、名指しになった理由は
①今をときめくモンキーセンターを取材したい
(その頃Twitterのフォロワー数が伸びたり、YouTubeが人気になってきていたりした時)
②飼育員をしている女性(女性を取り上げる番組なので)
③肩書きがある人

そして、モンキーセンターの飼育員の中で、女性で、肩書きを持っているのは…私だけ。 その肩書きを呼ばれるときは良くないことが起きるという、いわゆる『“主任”の呪い』発動です。

取材が決定したからには、自分のルールを考えてみよう~とひたすら思い返しました。
園長からは「7つもルールあるのか?」なんて言われていましたが、意外に見つめなおすと、細かいオンナだな(怒)(泣)(辛)と自分で思うわけです。

9月3日、Zoomを使った打ち合わせで、細かいオンナのいい部分だけ抜粋し、自分のルール的なことを話しました。
1本のネタになるか検討してみますというような言葉を最後に、打ち合わせ終了。
どうかボツにしておくれ・・・

そして9月17日、改めて取材のお願いが・・・・・来てしまいました。
取材開始日が決まり、9月24日から密着スタート。


初日はディレクターさんとアシスタントさんとの顔合わせ。
密着取材だから「2~3日かな」なんて話したら、「1週間以上はあります!」と。
ウソだ~。

なんなら普段は2週間以上、長い方だと半年ぐらい密着します、って。
コロナ禍により、撮影スケジュールがつまっていて、かなりぎゅっとして取材します、と。

え~!!

最初に仕事の1日のスケジュール、1週間のスケジュールを伝えました。
休日は何してるんですか?と言われ、たまたまエステに行っていたから、「今はエステですね。」と言ったら、キュピーン!とディレクターさんの目が光ったことを今でも覚えています。

「実は、セブンルールのスポンサーが花王さんなので、必ずビューティーカットが必要になるんです!!エステ最高です!!」

びゅ、びゅ、びゅ~てぃ~かっと~??
普段ウ○コまみれの汚い飼育員からは、それはそれは遠い言葉『ビューティー』。
休日のことまで考えてなかったから、ポロリと言ってしまった言葉に後悔。

仕事とプライベート両方ともガッツリ取材されるんだな、という認識ができた1日目でした。

2日目から、いよいよ取材開始~!
この日はテナガ担当だったけど、あいにくの雨。
一番飼育員っぽい作業が見られる日だったんだけど、あまり絵にならず。

それ以降は天気が良い日が続いたので、いろんな場所でインタビュー。
これがまた、うまく答えられないんだな~。上手に切って貼ってしてもらい、VTRではすごく良いこと言っている人になれました。





仕事が終わり、家に帰った後にもインタビュー。
ここで波乱の幕開けです。
今まで行った海外の写真を引っ張り出し、エピソードトーーク。
大量の牛グッズを発見され、予期せぬウシトーーーク。
気を抜いて、カメラが回っていることを忘れ、話してしまった元彼トーーーーク。

いくつか疑問に思っていた方もいるので、ここでお答えしますが、VTRの中に映っていたカピバラさんはしっかり牛グッズです。


ウシのことをこんなに話すと思っていなかった。

そして問題映像、休日シーン。
エステへ・・・。本当はエステする箇所は腹とか太ももとかでしたが、さすがに全国に醜態を見せるわけにいかなかったので、プチ醜態の腕と顔で勘弁していただきました。

エステ後、実家へ。
「顔を出したくない!」という父は背中だけ出演していました。
小さい頃の動物と映った写真ありますか?という質問に、やたらめったら、いろんなものを出してくる母。私が覚えていない写真も文集も。
やってくれました。

そんなこんなで、ある程度ネタがそろったら、
追加撮影がちょこちょことあり、ようやく終了~!


実はカットされてしまったシーンやネタが多々あります。
モンキーセンターを紹介するだけで、1/3は番組埋まっちゃうから仕方ない(笑)

いくつかご紹介します。

・仕事終わりに園長たちと中華料理屋へギョーザを食べに行きました。
 母のギョーザにつながる伏線でしたが、残念ながらカット!
 母のギョーザの味ととっても似ていて、私の疲れを癒す最重要拠点。

・赤見さんと辻内さん、それぞれにインタビューがありました。
 赤見さんは私が帯広にいるときから知っているので、当時のこと含め話してくれていたと思います。辻内さんは一緒にモロッコへ行った仲なので、きっとそのことを話してくれていたと思います。何をしゃべってくれたかはわかりませんが、私の悪口を言ったからカットだったかもしれません(笑)

(モロッコでの辻内さんとの記念写真)

・カットされたルール
実は、7つのルールは自分が決めたわけではありません。
7個以上あるルールから、うまく選定&組み合わせていただきました。
カットされたルールは
「落ち込んだときはギョーザ」・・・ネタの渋滞でカット。
「園長から飲みに誘われれば絶対行く」・・・たぶん、ご時世と合わずカット。
「家では裸族」「風呂は2時間以上」・・・放送事故になるので取り上げられず。
「朝は飲むヨーグルト」・・・大好きな飲むヨーグルトをコップ大量に入れて一気飲みしたけど、敢え無くカット。
「年1回、動物を求めて旅行する」・・・コロナ禍で直接撮影できなかったため断念。コロナの影響なかったら、制作費で海外行けたかも!?
「迷ったときは楽しいほう」「やりたいことある人が優先」・・・仕事でもっともと言っていいほど大事にしているけれど、それに合う映像が難しく断念。
「いつも動物のことを考える」・・・牛にのまれました。
「帰り際、動物たちには、おやすみ、またね、と言う」・・・動物舎を最後に出るときにかける声。動物は突然亡くなることも多いので、また明日も会いたいという気持ちをこめて言っているけれど、人に聞かれた!って思ったことで、取材中に気付いたルール。どうしても夕方だから映像が暗いのと、檻越しになりがちなのでカット。



とまぁ、裏話はこんなところですが、
放送を見た知人・友人からの反応は
「面白かったよ~!!」がダントツ一位。
セブンルールは、面白かった~って感想を言う番組じゃないと思うんです。
正解は「ステキだった~」とか「タメになりました~」とか。

やっぱり飼育員は『ビューティー』から遠いわけです。
ですが、楽しんでもらえて、動物に1mmでも興味を持ってくれたのであれば飼育員冥利につきます。

「ウシが好きだとは裏切られた~!」との声も多くいただきましたが、ウシ好きがあったからこそ、今ここで働いています。私の中ではウシもサルもつながっているのです。

自分の中では同業者の方から「共感しました~」と言われたのが一番ウルっとなりました。
ありがたい。
がんばって良かった。

そして、セブンルールを見てくださった来園者の方々からプレゼントをいただきました!

牛グッズ、

牛グッズ、

牛グッズ!

牛グッズは大好物なので、よだれが出ます。
みなさん、私が持っていないものをピンポイントでくださるのでスゴイ!

牛グッズ以外には・・・

もらったときには爆笑しました。がんばります!

番組をご覧くださったみなさま、
この記事を最後まで読んでくださったみなさま、
ありがとうございました!

(附属動物園部  田中 ちぐさ)

2020年12月28日更新
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