三猿の世界をめぐる① 1通の手紙からの縁
12月のある日、1通の手紙が届きました。差出人は福岡にお住まいの方で初めて聞くお名前。封を開けてみると、三猿のことについて書かれていました。
コロナ禍によって臨時休園となったときに作った民俗資料「猿二郎コレクション」のウェブミュージアム(https://www.j-monkey.jp/research/enjiro/index.html)をご覧いただいたことがきっかけで筆をとられたとのことでした。自分が作ったものに反応してくれた方がいたということはとてもうれしい出来事でした。そして、肝心の手紙の内容はというと、三猿の起源についてでした。
語呂合わせから三猿は日本固有のもの、と思いがちですが、実際には世界各地でお土産品などとしてみることができます。ではこの三猿の発祥の地はどこなのか、もちろん日本説は有力ですが、それ以外にも南アジア、エジプトなどの説が出されています。そして今回の手紙には郷土史家である差出人の方の論考が書かれていました。
2018年の特別展「さるづくし」より海外の三猿の展示
私自身は三猿の研究者でも何でもないわけですが、2018年の特別展「猿づくし」などを企画したときに調べてきたことを踏まえて返信しました。やり取りをしていくうちに、この方が個人で収集されてきた三猿に関する資料を寄贈していただけることになりました。
そして先日の2月17日、段ボール箱で13箱という膨大な資料が届きました。まずは確認して中に何が入っているか、輸送の途中で壊れていないかを確認することが先決です。すべての箱を開けてビジターセンターのホールに並べてみました。
そして先日の2月17日、段ボール箱で13箱という膨大な資料が届きました。まずは確認して中に何が入っているか、輸送の途中で壊れていないかを確認することが先決です。すべての箱を開けてビジターセンターのホールに並べてみました。
数えてみるとおよそ600点。ホールに並ぶ光景はなかなか圧巻でした。三猿をかたどった国内外の人形だけでなく、掛軸や明治時代のポストカード、古書籍、工芸品やコインなどさまざまな種類の資料が出てきました。それぞれの資料には付箋にどこで集めたものかが書かれていました。この情報こそが博物館の資料としては重要です。その資料が「何物かを理解する」ためにはこうした情報が欠かせません。コレクターから資料寄贈の申し出が博物館にあっても、情報がほとんどないために博物館資料とできずに受け入れられなかったというのはよく聞く話です。今回寄贈された資料は量だけでなく質も高い物でした。
今回寄贈された資料には、モンキーセンターにないものが多数ありました。その1つが愛知県一宮市、旧尾西町で作られている郷土人形の起土人形(おこしつちにんぎょう)です。地元愛知県の郷土人形ですが、猿二郎コレクションにはありませんでした。おそらくは収集年代の違いが影響しているのでしょう。今回の資料の寄贈により、モンキーセンターのコレクションが一層充実したのは間違いありません。
3月20日(土)よりビジターセンターにて特別展『三猿博 ~見ざる・聞かざる・言わざる大集合』を開催します。展示資料の選定などまさに準備作業の最中に届いたこれらの新しい三猿資料は、きっと展示をさらに彩ってくれるはずです。とはいえ1か月前という、開幕直前で展示品を増やすのはなかなか大変な作業です。まずは今回の資料を整理して、展示品の選定をやり直して、会場レイアウトも練り直して……。ですが、今回の特別展は寄贈された資料をお披露目する絶好の機会です。どんな展示になるか、どうぞお楽しみに。
(学術部 キュレーター 新宅 勇太)
(学術部 キュレーター 新宅 勇太)
2021年2月22日更新
関連キーワード:民俗資料、特別展、三猿
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