亡くなる命
モンキーセンターでは毎年10月17日の創立記念日の日に動物慰霊祭をおこないます。そのため、10月になると毎年亡くなったサルのことを思い返します。今年、ワオキツネザルのレンガが長い生涯を終えました。昨年はレンネット、一昨年はブラウンキツネザルのボール、その前はウメキチ。どの個体も限りある命をまっとうしました。

 私たち飼育員は毎日たくさんの命と向き合っています。その中で命の重みを日々感じています。


 私は飼育員になる前からわかっていたつもりでしたが、ウメキチが亡くなって初めて本当の命の重みに気づきました。高齢だったウメキチは朝寝室で倒れていたため、すぐに病院に連れて行きました。自力での呼吸が困難で、酸素マスクを着け処置をしていただきましたが、これ以上してあげられることがなく、最後はマスクを外し静かに見送ることになりました。涙が止まりませんでした。小さな体でも一生懸命に生きていた命。今まであたりまえのようにあった命がなくなる悲しみ。もう二度と会うことができない寂しさ。残されたミツオとレンネットは何か感じているのか、これからどんな生活を送っていくのか。実際に死を目の前にするとその重さは言葉では表せないほど大きなものだと感じました。飼育員として担当動物のことが大好きで、命がなくなるのは辛くて悲しくて悔いが残ります。でも今思い返すとその生きている姿、最期を迎えるときは動物らしくどこか美しさがあるように思います。みんな最後まで生きようとする野生動物の力強さを感じました。

 いつも何気なく過ごしていますが、大切なものの死を経験すると、生きていること自体幸せなことだと気付かされます。レンネットが闘病中のときは目が見えることがとても特別なように感じました。若くして亡くなった命があることを絶対に忘れてはいけません。

 みなさんは動物たちがエサを食べたり、遊んでいたり、ケンカしたり、いろんな瞬間を見ていると思います。動物一頭一頭に将来がありいつかは亡くなります。みなさんも大好きな動物の将来を想像して、今生きている命を大切に思い動物たちを見てみてください。
(附属動物園部 市原 涼輔)

2022年10月24日更新
関連キーワード:動物園