サルとトラとウサギ
2022年も12月に入り、年の瀬となってきました。この時期になると私が毎年考えるのは、「干支」です。霊長類と新たな年の干支をつないだ小さな展示ができないかと思うのが恒例となってきました。ですが必ずしも毎年できるわけではありません。
今年2022年は寅年でした。モンキーセンターの資料でトラとつながるものとして見つけたのは「ぬえ」という妖怪でした。頭はサル、胴体はタヌキ、手足はトラ、そして尾がヘビという、平家物語にも登場する由緒正しい化物です。勇猛な武者によるぬえ退治の浮世絵、恐ろしさをみせないかわいらしい姿をした張子など、ぬえにかかわる資料は何点か所蔵しています。ただ、小さな資料数点で展示を作るのはちょっと無理でした。
左:猪ノ早太ヌエ退治の図 右:張子のぬえ
来る2023年の干支は卯です。ウサギとサルの組み合わせであれば、とても有名なものがあります。それが鳥獣戯画です。今年の春の特別展でも展示しましたが、モンキーセンターは原本を縮小複製したものを所蔵しています。鳥獣戯画はサルとウサギが水浴びをしている場面から始まります。このほかの場面でもサルとウサギが描かれています。また、鳥獣戯画は長らく多くの人に愛されてきました。それはさまざまなグッズにあしらわれていることからもうかがい知ることができます。これだけあれば展示ができそう、ということで現在小さな展示の準備を進めています。
左:鳥獣戯画 甲巻(縮小複製) 右:鳥獣戯画図札入
そういえば、モンキーセンターにはウサギにまつわる種類がいます。ハイイロウーリーモンキーです。一見しても似ている所はなさそうです。ウーリーの名前はウール、つまり羊毛の織物のような、というところからきています。ウサギのように耳が長いわけでもありません。ではどこでウーリーモンキーとウサギがつながるのか、それはこの種の学名、つまり万国共通で使っている名前にあります。ハイイロウーリーモンキーの学名はLagothrix canaといいます。ギリシャ語でlagosはウサギ、thrixは毛を意味するので、Lagothrixはウサギの毛という意味になります。他の霊長類とは違った毛並みがウサギの毛のように感じられたのでしょうか。意外なところにウサギとサルのつながりがあるものです。
(学術部 キュレーター 新宅 勇太)
(学術部 キュレーター 新宅 勇太)
2022年12月5日更新
関連キーワード:民俗資料、南米、干支
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