イギリスの動物園でくらすテナガザル
 8月30日から9月9日までの日程でイギリスの動物園へ研修に行ってきました。本研修では動物園5つ、博物館1つ、植物園1つ、水族館1つの計8施設に行かせていただきました。そのなかの5つの動物園すべてで、テナガザルが飼育されていました。訪れた施設の順にご紹介したいと思います。
 まずはエジンバラ動物園です。
 キホオテナガザル(Nomascus gabriellae)のおとなのオスが3頭で飼育されていました。テナガザルのバチェラー群(オスだけのグループ)はこれまでにあまり見たことがなく、興味深かったです。
 施設としては四角いフェンス囲いのシンプルな屋外エリアではありましたが、高さや広さ はあり、3頭が距離をとりつつも同じ笹の葉を一緒にちぎって食べている様子が印象的で した。


 そしてロンドン動物園ではキタホオジロテナガザル(Nomascus leucogenys)を見ることができました。エリア内にはオスが1頭しか確認できませんでした。施設としては都市型動物園ということもあり、エジンバラ動物園よりこじんまりとしていましたが、屋外はズーメッシュ(インビジブルネットとも呼ばれる)というワイヤーネットで囲われており、エリア内の植栽が豊かであったり、メッシュ越しに園内の樹木が借景となっていたりと、圧迫感はそれほど感じさせないような造りになっていました。
 続いてチェスター動物園です。
 ワウワウテナガザル(Hylobates moloch)のペアとその子どもたち(5才のオス、3才のメス)がくらしていまいた。屋内が巨大ドームの一画に、屋外もズーメッシュで囲われた高さのある広いエリアがありました。この日は現地の担当者の方が一日中、大変手厚く施設構造などの説明をしてくださったこともあり、なかなか動物の観察や写真撮影の時間をとることが難しかったです。
 4つ目はトワイクロス動物園です。
 大変見づらく申し訳ないのですが、この画像はフクロテナガザル(Symphalangus syndactylus)のオス2頭でくらしているエリア(旧舎)で撮影したものです。トワイクロス動物園にはGIBBON FOREST(新舎)というエリアで4種のテナガザルが飼育展示されているのですが、そこでも飼育されているフクロテナガザル(ペア)の隣エリアのボウシテナガザルで出産があり、この時は一部観覧規制がされていたため、なんとか撮影できたのが旧舎のものになっております。
 アジルテナガザル(Hylobates agilis)もペア飼育でした。GIBBON FORESTは中央に屋内エリアがあり、そこから種ごとに計4つの島が屋外エリアとなっていました。
 キタホオジロテナガザル(Nomascus leucogenys)もペアで飼育されていました。画像は出入り口から外を眺めている様子を撮影したものです。
 最後にペイントン動物園です。  ボウシテナガザル(Hylobates pileatus)の親子が樹上で過ごす様子を観察することができました。ここでは樹木が生い茂った島で放し飼いとなっており、しなる枝でブラキエーションしたり、好みの葉を採食したり、野生に近いような環境でくらしていたことが印象深かったです。
 JMCのジャス感満載のシロテテナガザル(Hylobates lar)の様子も見ることができました。
 イギリスでの研修中に、全部で3属7種のテナガザルに会うことができました。

 テナガザルは4属20種ほどに分類されており、そのすべての種に絶滅のおそれがあります。




 10月24日は【国際テナガザルの日】です。

 この日は、テナガザルについて多くの人々に知ってもらうことを目的に、IUCN(国際自然保護連合)が組織する小型類人猿チームが2015年につくったものです。国際テナガザルの日をきっかけに、テナガザルをとりまく環境問題への理解を深め、改めて自分たちに何ができるのか考えてみたいと思います。

(附属動物園部 テナガザル担当  奥村 文彦)

2023年10月25日更新
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