プリマーテス研究会を振り返って
 2024年2月4日プリマーテス研究会(以下、プリ研)が開催されました。友の会の方であればだれでも参加、発表が可能な研究会です。参加されたことのある方もいらっしゃるのではないかなと思います。今回のプリ研ではアフリカセンターのメンバーから『ポトはどこで寝るのを好む?』という発表タイトルでポスター発表をおこないました。今回はその裏側について振り返りながらお話ししていきたいと思います!

 まず、なぜポトの巣箱使用にしたのかといいますと……皆さまは過去のプリ研を覚えていますでしょうか?まぁ、さすがに覚えている方は少ないと思います。実は2018年1月のプリ研で僕はレッサースローロリスの巣箱使用のポスター発表をしていました。その時は明るい時間帯はどの個体とどの個体が一緒に巣箱に入って寝ていて、部屋が暗い時間帯にはどの個体がどの個体に対してどんな社会的行動(グルーミング、威嚇など)をしているのかを調査していました。プリ研のテーマを決めるためにアフリカセンターのメンバーで集まった時にそのことをふと思い出し、「ポトでも似たようなデータをとってみたら面白いんじゃなかろうか?」と思ったのがはじまりでした。話し合いの日にはすでにポトは2頭とも単独飼育で社会的行動をテーマにすることはできないため、ポトの巣箱の選択に関わる条件を探ることを目的に据えた調査を提案しました。

テンカ


トノ

 それに加えて、ここ1年でポトの飼育環境に(悲しい話でもありますが)大きく変化がありました。2023年8月にポトのテンカと同居していたツノが、4か月後の12月にはショウガラゴのチャーリーが亡くなったのです。ツノの死後、同居していたテンカがよくツノと共に使用していた巣箱とは別の巣箱を使っている印象を受けました。元々テンカはいろいろなところで寝る個体で、ツノと同居中もその別の巣箱で寝ている姿を見ることはありましたが、別の巣箱を使うのには理由があるのかなと気になっていました。さらにチャーリーの死後には残ったトノとテンカの飼育エリアの拡張をしました。アフリカセンターの夜行性展示室は4部屋あり、それぞれは網で仕切られているのみです。そのためこの仕切りの網をつけたり外したりすることで、飼育エリアの大きさを変えることができます。当初はトノ、チャーリー2部屋、テンカの順で使用していたところが、トノ2部屋、テンカ2部屋というようにチャーリーの部屋をトノとテンカで分ける形で、部屋の拡張をしました。(右写真。2024年2月現在)それによって彼らが移動できる範囲も広がり、選択できる巣箱が増えたので、それによる変化も観察できるかもしれないというタイミングが2023年の12月頃でした。そこからはデータ収集の1カ月間でした。


 発表まで日程も限られていたので、毎日記録する項目を日常作業の延長線でできる”巣箱周辺の過去24時間の最高最低温度”、“最高最低湿度”、そして”その時に寝ている巣箱”に絞りました。そのため、初めにやったことといえば、デジタル温度計を巣箱の近くに増設するのみでした。
 そこから2週間ほどデータを取った頃、廣澤さんからチャーリーで昔、巣箱の中に枯葉を入れたら、巣箱を使い始めたことがあった。と、いう情報をいただき、巣箱の中の環境を変えるのと同時に巣箱の大きさも変えてその影響も調べようということになりました。
 2週間分のデータの傾向からテンカが巣箱②をよく使っていることはデータとしてわかっていたのでメンバー内で話し合い、巣箱①の巣箱内の環境を変え、巣箱④を大きいものに変えたら、巣箱内の環境が巣箱の選択に影響するなら①を、巣箱の大きさが選択に影響するなら④を使い始めるという仮説のもと、さらに調査を発展させていきました。


 どういう結果が得られたのかは、2024年3月16日までビジターセンターにてポスターが展示されておりますので、ぜひそちらを見に来てみてください!他のスタッフが作成したヤクシマザルの歴代アルファオスをまとめた研究など、他にも見所たくさんのポスターがご覧いただけます。
(附属動物園部 アフリカセンター担当  土性 亮賀)

2024年2月27日更新
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