もう臆病者とは言わせない
私が担当しているアジア館は、アジアに生息する「マカク」と「リーフイーター」と呼ばれるサルのなかまを飼育しています。食性の違い等はありますが、全体的に黒・茶色などといった地味な色が多く、来園者の方からは「全部似たようなサルだね~」、「ほぼ茶色」と言われてしまうことが多いアジアの館サルたちです。ですが、一際目立つ存在感で「その個体にどうしても会いたい!」となるくらい熱烈なファンを獲得した個体がいます。

チベットモンキーのザルバです。


ザルバは、2006年3月19日生まれの18歳のオスです。チベットモンキーは野生では中国南東部の標高の高い森林地帯に生息しており、マカク属の中で最大種。その中でもザルバはオスなので、アジア館の個体の中で一番身体が大きいです。

大きな身体でのんびり過ごし、時々見せる王様のような姿が面白いと話題を呼び、ファンの方から『ザルバ様』と親しみを込めて呼ばれています。ザルバをモチーフにしたグッズもたくさん制作され、日本モンキーセンターの人気者です。

モンキーセンターでは、ザルバを含めて計5頭(オス1頭メス4頭)のチベットモンキーを飼育しています(2024年4月時点)。その中でザルバは、αオスとしてケンカの仲裁にまわったり、時々マウントをしたり、群れをまとめたりする存在です。

そんなザルバですが、母親のサクラ(7年前に死亡)と兄のキルア(6年前に死亡)が存命時代は、母親にベッタリで、デッキブラシが視界に入るだけで引きこもったり、 群れのケンカの仲裁は主に兄のキルア頼りきりになっていたり、今のザルバからは見当もつかないほど臆病な性格をしていたそうです。

過去の写真やブログを見てみると、本当に母親にベッタリで顔つきもまだまだ幼いザルバがたくさんいます。現在のザルバと比べてみて、行動の変化だけでなく、顔つきもαらしくなったのだなと成長を感じました。ぜひ私も、その成長過程をみたかったものです。

立派になったとはいえ、まだ時々ちょっとした事でびっくりして大きな声をあげたり、あまりにもぐっすり寝過ぎて木から転げ落ちそうになったりと、不器用で可愛らしいところもあります。

これからも、どっしりと構えた姿で群れの仲間たちを守るかっこいいαオスであるとともに、不器用で愛らしい姿でファンを魅了し、園を盛り上げてくれることを願います。我々アジア館担当者も、ザルバをはじめ、アジア館のサルたち全頭がこれからも健康で生き生きと過ごせるように日々彼らと向き合っていきたいと思います。
(附属動物園部 アジア館担当  浮瀬 百々香)



2024年4月30日更新
関連キーワード:動物園、アジア、マカク