臆病なチベットモンキー
私が担当しているアジア館は、アジアに生息する「マカク」または「リーフイーター」と呼ばれるサルの仲間を計12種飼育しています。この12種のそれぞれのサルの食性や行動の違いは置いておいて、「全体的に同じ色ですね」とか「ニホンザルは顔が赤い」といった感想を来園者の方々から聞くことも少なくありません。しかし、このコラムを読んで下さっている方々は既にご存知かと思いますが、色は地味でも、その存在感だけでアジア館で最近ひと際目立っているサルがいます。
チベットモンキーのザルバです。
ザルバは、2006年3月19日生まれの11歳のオスで、アジア館では一番大きなカラダをしています。 その特徴的な大きなカラダで、晴れた日には止まり木の上で仰向けに寝転がり、ムギをまけばうつ伏せに寝転がりながら食べ、ホースで水を流せば足をブラブラさせて水遊びをするといった、 のんびりどっしりとした様々な行動を日々見せてくれています。 そのため、公式ブログ「飼育の部屋」の常連であり、Twitterに写真を載せればアジア館のサルでは 頭一つとびぬけたリアクション数を獲得できるようになりました。
このように一見穏やかな性格に見えるチベットモンキーですが、野生では中国南東部の標高の高い森林地帯に生息しており、非常に攻撃的な性格をしています。 モンキーセンターの個体も、アジア館のその他のサルと比較して、かなり外的刺激に敏感で攻撃的な性格をしており、掃除の際に目が合うとびびって歯を剥きながら後退りし,背中を向けると飼育員に向かって飛びかかってくることも少なくありません。 ザルバはメスに輪をかけて敏感であり、デッキブラシが視界に入るだけで引きこもったり、 そのカラダからは想像がつかないような高い声をあげたりしています。そのため、群れのケンカの仲裁は主に兄のキルア頼りになってしまっているのが現状であり、群れをまとめるにはまだまだ経験不足のようでした。
そんなモンキーセンターのチベットモンキーですが、今年の10月15日に母親のサクラが亡くなり、群れに少しだけ変化が起きました。今まで母親にべったりで、他のメスに全く無関心だったザルバも、きちんとケンカの仲裁に回ったり、マウントしたりする行動が見られるようになりました。食事の入ったバケツにびびって寝室へ引きこもる姿はまだまだ見られますが、少しずつ、どっしり構えた姿へと成長してくれることを願っています。
(附属動物園部 アジア館担当 舟橋 昂)
2017年12月5日更新
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