コンゴの市場にて

 以前、コンゴ民主共和国でのボノボ調査のことを書きました(こちらからどうぞ)。現地でのボノボの調査を終えて首都のキンシャサに戻ると、ほぼ毎回行く場所があります。町の一角に立つ、土産物のマルシェ(市場)です。

 このマルシェ、写真を撮ろうとすると怒られるので風景をお見せできないのが残念ですが、彫刻、絵、アクセサリー、切手など、いろんな品々が並びます。そしてとにかくにぎやかで、歩いていると店主が「マイフレンド」(もちろん初対面ですが)などと声をかけてきます。そこで何か買おうとすれば、とんでもなく高い額を提示してくるのも毎度のこと。負けじとこちらもとんでもなく安い額(言い値の2割くらい)を提示し、相手が首を横に振ったとたん、「じゃあいいや」と離れるのがいつものやり方です。そうすれば大慌てで店主が飛んできて、値下げするからと言ってくるので交渉成立、というのがここでの買い物の流儀。買い物もこの国では一筋縄ではできません。

 そして今回の本題はこのマルシェで見つけたある木製の彫刻です.




 三頭のサルが並んでいます。顔の雰囲気や尾がない特徴は、チンパンジーかボノボのように見えます。そして三頭は目と耳と口をそれぞれおさえるポーズをしています。そう、「見ざる・聞かざる・言わざる」の「三猿」です。

 日本語の「語呂合わせ」から三猿は日本特有のもの、と思われがちですが実際は違います。コンゴ民主共和国をはじめ、世界各地で見ることができます。一説には日本にはシルクロードを経由して入ってきた、とも言われていますが定かではありません。日本以外の国では、三猿はその土地に生息するものがモチーフになることも多いようです。霊長類が生息していない欧米ではチンパンジーが使われることが多くあります。

 土産物のマルシェで売られていたものですから,欧米など海外の人間を意識したものだろうと考えられます。「こんなところで」と文化の不思議な広がりを感じた、「もの」との出会いでした。

(学術部 キュレーター  新宅 勇太)

2018年7月13日更新
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