どこかがおかしい三猿

 「見ざる・聞かざる・言わざる」と言えば日光東照宮の彫刻でもおなじみの「三猿」です。この三猿、実は世界中にあり、日本発祥のものではありません。たまたま日本では語呂があった、というだけのようです。英語圏では“Three Wise Monkey”と言い、チンパンジーがモチーフにされることが多いようです。賢さとチンパンジーが結びつけられたのでしょうか。以前にもコンゴで見つけた三猿を紹介しました。(記事はこちら

 モンキーセンターの民俗資料、「猿二郎コレクション」にはまだまだ多くの世界各地の三猿があります。その中には、おや、と首をかしげたくなるものもあります。






 この三猿は南アフリカ共和国のケープタウンのものです。かわいらしくデフォルメされていますが、雰囲気はチンパンジーの子どものようです。しかし背中側を見ると、そこにはしっぽが。チンパンジーにしっぽはありませんから、これは人間の豊かな想像力の産物、実在しないサル、ということになるのでしょうか。工芸品、芸術品に科学的な正確性を求めるつもりはまったくありませんが、普段から霊長類を見ている立場からすると、少しだけ変な気分になるものです。

 ちなみにこの三猿、見ざるは目を隠しているのではなく、指の隙間から実は見えていそう、言わざるは押さえているのは口の半分だけ、聞かざるも片手は耳をふさいでいますが、もう片方は他のサルの肩に回している、という変わり三猿です。どういった教えなのか、もう少し調べてみたいと思います。

(学術部 キュレーター  新宅 勇太)

2018年8月12日更新
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