バーバリーマカクの群れくらし計画
2017年4月、アフリカ館担当として戻ってきました。そのころから「バーバリーマカク全19頭が群れでくらす」ということを進めてきました。バーバリーマカクは本来10頭以上の群れでくらしている動物です。ですが、動物園ではそう簡単にいかないのもまた事実です。

19頭は7頭と6頭からなる2群れがアフリカ館でくらし、残りの6頭はバックヤードで単独生活をしていました。群れくらしができない理由はさまざまで、群れのリーダーになったストレスからか自傷行為におよんでしまったジェット、群れになじめず10年以上も単独でくらしていたリンばあちゃん、人工保育で育ち、だれともくらしたことのないクオンなど、なかなかの個性派ぞろいでしたが、全頭を巻き込んでの群れづくり計画が2017年7月にはじまりました。

既存の群れは一度解消し、1対1でのお見合い・合流をさまざまな組み合わせで実施し、個々の関係をつくってもらうところからスタートしました。1対1だと仲良くしてくれても、3頭になると途端にどちらを味方につけるか、どちらに味方をすると良いのかという政治的駆け引きが繰り広げられます。交流を一切せずに冷戦になってしまうこともしばしば。少しずつ同居する頭数が増えていき、群れらしくなってきたのもつかの間、群れ内のパワーバランスに微妙な傾きが生じると、怪我をする個体が続出してしまいました。怪我の治療のために群れから離れてしまうと、関係づくりは以前よりも難しくなり、一歩進んで二歩下がる、そんな日々が続きました。

難航しながらも、少しずつ進む群れづくりの中で、彼らはいろいろな表情をみせてくれました。何年かぶりに再会して、サモハンにべったりと身を寄せるキン。新しい遊び仲間が増えてヨナにじゃれつくクー。いつの間にかバーバリー流の挨拶ができるようになったクオン。クオンがパニックになると距離を置いて何もせずにいてくれるグンソクとヒョンジュン。メスとの接し方がわからず、大きな手でおそるおそる、でも優しくチャンに触れるブルース。彼らのまっすぐな姿はとても美しく、心打たれます。

現在、全個体が群れ(12頭、4頭、3頭の3群)の中でくらしています。群れができるまでには、私の力不足ゆえに、彼らに沢山の怪我をさせてしまい、しんどい思いをさせてしまいました。日々変わりゆく彼らの関係性を見極めながら、彼らの寿命が尽きるまで、群れの中でバーバリーマカクらしくくらせるように、これからも尽力して参ります。

(附属動物園部 アフリカ館担当  辻内 祐美)

バーバリーマカクのこれまでの群れづくりの記録はこちらもご覧ください。
2019年5月29日更新
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