三魔女、テケ王国を行く。

リンガラ語の不思議
 Mbali(バリ)の「最後の類人猿」ボノボを追う“秘密結社”MMM”って、訳ありそうでなかなか良い雰囲気が出ている。ちょっと見で省略形の意味が分からないのが、“秘密”の秘密たる由縁であろうから。

 実は、MMM命名で盛り上がった時、MihoだしMisagoだし、イニシャルMつながりでバッチリ!と思ったのだが、残念ながらあまのじゃく?の私のところでつまずいた...。物心つくかつかないかのころ、自分の名前が言えなくて「ばおび」と名乗っていたそうだから、リンガラ流儀で“Mbaobi”とコンゴ名を付けてしまえ。いや、Naomi Campbellが一世を風靡した20代、なお“び”なことを面白がられて、ニックネームは「びぃ」やら「びーちゃん」だったから(Mbaba化したいまだに…汗)、“b”始まりで“MB?/Mbee?”となるしMでいける。とかなんとか、いろいろこねくり回したけど、全部、苦し紛れ。
Nkala村の家族。ボノボ観察の帰り道、農作業小屋前でおしゃべり
 と、ここまで書いてムム。私のニックネームって、リンガラ以前にアルファベットで書けないじゃん。ためしに、単語を音読してくれるGoogle翻訳サービスに入れても…うまく行かん。そう、アルファベットって、ラテン語オリジンの表音に特化してるから、案外、使い勝手が悪い。文字も26個しかないし。

 中国や韓国の会議で名刺交換すると、アルファベット表記の名前を正しく読めたためしがない、あれと一緒。裏を返して漢名があると、読めるかどうかは別にしてホッとする。他方で、同じ漢名表記の韓国の方に「どうしてアルファベット表記は違うのですか?」などと野暮な質問をして、「漢字は当て字で、微妙に読み方が違うからね」(そっか、ハングルが正式表音だもんね)…と堂々巡りに陥る。名前の書き方一つとっても、言葉は深いなぁ。

 私の名前、Naobiも、ヨーロッパの友達に読ませると、「ナヨビ」である。で、クリスマスカードはほとんど、“Nayobi Okayasu”で届くことになる。“ローマ字”が和製であることを、妙に実感する一コマ。アルファベットは、あくまで世界の一握りの人々に座りがいいだけだ。

 そう考えると、前回、リンガラ語と日本語は相性がいい、と書いたの自体はまんざら嘘でもない。読まないンとかムとかがちょっと厄介なだけで、それだって例外は少ないから、フランス語の読まないsやtやhに比べたらかわいいもんである。
 バリのカウンターパート、地元NPOボー・モン・トゥールも、MMTと書かれると秘密結社仲間みたいだが、カタカナで「ボー」と書けば、そのものズバリの発音になる。

 地球の反対側、何万キロも離れたアフリカ中部の、コンゴ民主共和国。いまだに日本人はめったに行かない、そんな遠隔地の言葉が日本語に近い。30年前、初めてボノボの森に足を踏み入れた時、秘密の同志めいた匂いを嗅いで、つい嬉しくなってしまったことを、「バリ・ババ・ミサト」開始で思い出している。それは決して、私だけの思い込みではなくて、研究などで長期滞在する日本人は、揃って日・リンガラの“バイリンガル”に育つ! たぶん、その時には、(私もそうだったけれど)アルファベットは介在せず、言葉が直接、頭に入っていってるんじゃないかしらん。カタカナで。

 リンガラ語が日本語に近い、というのは、発音だけじゃなく単語もしかり。どれだけ近いか、という紹介は次の機会に譲るとして、まずはどれだけ遠いか、というのを、“初めてのボノボ”体験も含め、お宝映像付きで、美穂さんに存分に語っていただこう!
岡安 直比
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2017年7月22日更新
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