常設展のウラ話③ 大きな鼻のテングザル
ビジターセンターの常設展を奥に進むと、前回ご紹介したマンドリルの向かいに、リーフイーターと呼ばれる木の葉を主食とするサルたちの剥製標本が並んでいます。その中でもひときわ目を引くのが、大きな鼻のテングザルの剥製標本でしょう。大きな鼻だけでなく、美しいオレンジ色の体、手袋をはめたような大きな手、太鼓腹など、他のリーフイーターたちとも一線を画す容姿です。

現在日本モンキーセンターにはテングザルはいません。しかし日本で初めてテングザルの赤ちゃんがうまれたのは、ここ、日本モンキーセンターでのことでした。1974年9月18日にスラバヤ動物園から6頭のテングザルが来園し、1977年6月21日にメスのブンガが双子の赤ちゃんを出産しました。双子の1頭は翌日に死亡しましたが、もう1頭は元気に成長し、翌年生まれた妹とともに、繁殖計画のため1984年にジャカルタ動物園へ旅立ちました。

実はこの日本初の繁殖成功に貢献したのが、ビジターセンターの剥製標本の主、ムシムです。2頭の娘はムシムとブンガの間の子どもでした。ムシムも1974年に来園した6頭のうちの1頭で、とても立派な体格(肥満ぎみという記載もあるが)だったそうです。

過去に飼育していたテングザルのオスの写真。スラバヤ動物園からやってきたもう1頭のオスは若くして亡くなったので、
この写真はムシムだろう。

今では日本モンキーセンターでテングザルに会うことはできません。しかし雑誌「モン キー」ではテングザルを研究している松田一希氏(日本モンキーセンター アドバイザ ー)による連載を、写真とともに読むことができます。1巻は以下からオンラインで読む ことができますので、ぜひご覧ください。
https://www.japanmonkeycentre.org/jmonkey/

(学術部 キュレーター 赤見理恵)

過去のシリーズはこちら。
常設展のウラ話① 何かが違う!?オランウータンの頭骨
常設展のウラ話② マンドリルのカサブブ
2018年11月18日更新
関連キーワード:博物館、標本、テングザル