三猿の世界をめぐる③ “猿じゃない”三猿

2月に寄贈された資料の中には、これまでモンキーセンターがまったく所蔵していなかった種類の資料がありました。それが前回の最後にご紹介した、“猿じゃない”三猿です。

日本人にとっては日本語の「見ざる=見猿」の語呂合わせがありますから、猿以外がモチーフになることを想像しにくいものです。しかし三猿は日本以外にも世界各地でお土産品などとして見ることができます。他の国の人々にとっては、語呂合わせはまったく関係ありませんから、モチーフが猿でないといけない、というわけではないようです。

モンキーセンターのコレクションは猿に関わるものでしたから、こうした「猿じゃない」ものは収集されていませんでした。しかし今回まとまった形で70点ほどの「三猿のポーズをとる像」が寄贈されました。「三猿」ではないのでこれを何と言ったらいいのか難しいところです。台帳(資料のリスト)では三猿のような、という意味を込めて「三猿様~」と付けました。前回の掛軸でいえば「三猿様三福神図」といったところです。この「三猿様~」の人形たち、なかなか日本人にとっては珍しいものですので、ここでご紹介しましょう。


人が三猿のポーズをしているものがいろいろとあります。子どもがモチーフになるのは、やはり子どもへの教育、というイメージがあるのでしょうか。コレクションには大人の女性がモチーフになっているものもありました。
上はスウェーデン、下は中国のもの。

猿以外の動物がモチーフになることも多いようです。モチーフになる種類に共通点は見当たりません。親しみのある動物なら何でもいいのでしょう。他にもブタやゾウ、コアラなどをモチーフにした像もありました。三猿がどれだけメジャーな存在かを表す人形のように感じられます。

上段左からアメリカ(中国製)、インドネシア、ロシア、下段左からペルー、アメリカのもの。

天使も仏様も、さらには骸骨の死神も、”See no evil, Hear no evil, Speak no evil”と三猿の教えを説くようです。天使や仏様がこうした教えを説くのはわかりますが、死神が”See no evil”というのはなかなか洒落がきいています。悪いものを見たりすると死神がやってくる、とでもいったところでしょうか。ほかにも布袋様や、妖精がモチーフとなったものもありました。
左からフランス、タイ、アメリカのもの。

(学術部 キュレーター  新宅 勇太)


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2021年5月2日更新
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