三魔女、テケ王国を行く。

モンキーキャンパス
 前回のエッセイで、我が職場、「津田塾大学」のことを書いた。1900年開学以来すべての卒業生も全部合わせて3万人ちょっとしかいない小さな女子大なのですが、世界中どこに行っても、卒業生に会うのです、と書いた。舌の根も乾かないうちにというか、パソコンも閉めないうちに、というか、また、卒業生に会った。モンキーセンターで。

 このホームページの連載サイトにまで来てくださる方はよくご存知のことかもしれないが、モンキーセンターでは、年に6回、京都大学霊長類学ワイルドライフサイエンス・リーディング大学院との共催で、「京大モンキーキャンパス」というシリーズ講義が行われている。私は2017 年度の最終回、11月12日の講義を担当した。私自身はサルの研究者ではなく、人間の母子保健などの研究者である。モンキーキャンパスに、お声がかかった時、「あの、私は人間のことを研究しているので、サルの話を聞きにきた聴衆の方のご期待に応えられないんじゃないかと思うんですが」と言ったのだが、主席学芸員の高野さんは、事も無げに「ヒトも霊長類ですから」とおっしゃった。まったく、おっしゃるとおりで間違いはない。私だって、そもそも霊長類としてのヒトの性と生殖を専門にしてきて、ぜひ機会があれば、ボノボを見たい、ボノボの研究者の皆様とゆっくりお話しする機会が欲しい、と思ったので、Mbali に赴かせてもらったのだ。その結果として、ここに、連載とか、させてもらっているわけです。

 「ヒトにとって出産とはどういう経験か」という話をさせてもらい、熱心で意識の高い受講者の皆様に感服した。本当はサルの話を聞きたかったんじゃないかと思うが、そんなそぶりはまったく見せず、いっぱい質問をしてくださった、モンキーセンターとモンキーキャンパスファンの皆様に感謝するばかりである。
 この友の会プレミアムサイトも、そういう方に支えられているのだ、としみじみと思ったことである。お読みくださっている方、本当にありがとうございます。
日本モンキーセンターの京大モンキーキャンパス 毎年120人募集中
 モンキーセンター講演の前日、メールが来た。「私は津田塾を卒業して、京都大学霊長類研究所にいます。先生がモンキーセンターに来られることを伺い、ぜひお会いしたいと思って・・・」。モンキーセンターのお隣というか地つづきというか、そういうところにある京大の霊長類研究所でタイやラオスのマカクの尻尾の骨について研究している若森参(ひかる)さんは、津田塾の国際関係学科在学中、自力で京都大学理学研究科、つまりは、大学院を受けられるような受験勉強をして、霊長類研究所の院生となった。

 今は博士論文を提出する直前であるが、技術補助の仕事もなさっているので霊長類研究所に研究室を持っておられる。目を輝かせてヒヒの腰椎の骨について説明してくれるまだ20代の彼女はすっかり形態学者としての貫禄十分。一緒にチンパンジーを2時間近く眺めていたような気がするが、私は元教え子に案内してもらえたことがうれしくて、うっとりするような時間を過ごした。若森さんの研究者としての人生を思うと、さらにうっとりする。

 キンシャサに行こうが、モンキーセンターに行こうが、卒業生がいる。軽率で、年甲斐もない行動は、彼女たちのためにも、してはいけないことになっていると思うが、そのような制御がいつまでたってもきかない自分にため息をつきつつ、そろそろこの連載の現場、Mbaliの話題に戻っていくことにしよう。船ではなく、セスナで向かった、Mbali の話・・・。
三砂 ちづる
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2017年11月24日更新
関連キーワード:母子保健、ボノボ、出産、おもしろい