三魔女、テケ王国を行く。

イケアハウス
 北欧の家具、IKEA。シンプルで機能的なデザインで、しかもセンスが良くて、主張しすぎず、部屋の雰囲気によく馴染む。お値段もとってもお手頃で求めやすく、イケアの店は都会的で、配置も魅力的で、店に行くだけで楽しい。コストを抑えるために、家具は自分で組み立てることになっており、欲しいものを決めたら倉庫というか、在庫が積んでおいてあるところに行って、自分でカートに乗せて持っていく。独特のシステムも興味深いし、売っているものも素敵だから人気が出るのも当然であろう。初めてIKEAショップに行ったのは四半世紀前くらいのロンドンだったような気がする。その頃まだ、日本国内にはIKEAショップはなかった。その頃のロンドンではとにかくお金もなかったし、新しく家具を置けるような家に住んでもいなかったから、何も買わなかったが、ショップの魅力に魅了されたものだ。いつかお金ができて、自分で家具をそろえることになったらここで買おう、と思わせられるような、とにかく、店自体に魅力があった。

 その後、IKEAさんは日本にも進出。買いに行けるところにIKEAショップがあれば、お値段も手ごろだから、家具が必要になると、そうだ、IKEA、行こう、というふうに考えるようになる。そうして、IKEAの家具を買い、組み立てるのだが、この組み立てる段になって、もうちょっとよく考えたらよかった、やっぱりお値段が安いということは、タイヘンなことなのだ、と感じる人は少なくなくて、私もその一人である。ようするに、思ったよりもタイヘンで、お店にあるように組み立てるにはずいぶん時間も労力もかかる。それはまあ、家具一つ組み立てる、というのは、それ相応の労力が必要なのであって、IKEAさんとしては、当たり前ですよ、とおっしゃるかもしれないし、IKEAさんじゃない、他の似たような家具屋さんの家具も同じかもしれないのだが、やっぱりタイヘンなものはタイヘンなのだ。

 例えば、近年、家にお客さんが増えたので椅子が足りず、IKEAで白い組み立ての安価なスツールをいくつも買ったことがあった。デザインの可愛らしさとあまりの安さ(1000円しなかったような気が・・・)に、足をつけてネジを止めるだけなのだから、問題ないよなと思っていくつも買って帰り、ほんの30分もあれば全部できるだろう、と思ったが、信じられない時間がかかってしまった。おまえが不器用なのだと言われたらそれまでだが、IKEAの家具にはいつも似たような思いを抱く。デザインもお値段も素敵→すぐ買う→組み立てる段になって、思ったより時間がかかって少し後悔する→でもできたものはそれなりに気にいるので、文句を言う気にもならない。毎回、同じパターンである。
 中村美穂さんの連載に出てくる、ボートの屋根に乗せられた巨大な荷物は、IKEAハウスである。IKEAの作った難民用シェルター。
いよいよご開帳のイケアハウスを前に、悩むゲン隊長

 現地に出かける前に、同じ隊で渡航するメンバーは、何度か、国内で打ち合わせ、というか研究班会議というか、そういうものを、集まれる人だけで集まって行う。2016年にMbali に出かける前も何度かみんなで、モンキーセンターだったり、アフリカ学会の会場だったり、そういうところで集まった。その時に、IKEAハウス、は、確かに話題に出ていた。岡安直比さんが、IKEAの作っている難民用のシェルターを、アフリカのフィールドステーションで使えないか、Mbaliにもそういう建物が必要だし、アフリカでこのように使える、ということがわかれば、それはIKEAさんにも有用な情報になりうるのではないか、というようなことを、おっしゃっていた。その後、発注とか通関とか、信じられないような岡安さんのご苦労を経て、このIKEAハウスはMbali行きボートの屋根にダンボールで梱包され、積まれたのである。

 IKEAの家具ならぬ、IKEAの家。2018年になった今も、まだ、建っていて、Mbaliで仕事をする皆様が使っておられるというので、結果オーライであるが、「ダンボール梱包資材」を「家」にするのは、はい、IKEAの家具と同じようなかなりのためらいと若干の後悔とtime-consuming(ひたすら時間のかかる)な作業が待っていた。
三砂 ちづる
バリ・ババ・ミサトのバックナンバーはこちら

2018年1月6日更新
関連キーワード:アフリカ、ボノボ、海外、おもしろい