マンドリルのオスたちは今、

キンシャサとメスたち

2021年11月22日からマンドリルの展示を一時中止していました。

これまで展示していたキンシャサという名前のオスを中心とした群れ(オス1個体とメス7個体)と、非展示エリアで飼育していたマンドリルのオスたちの飼育場所を交換することにしたためです。
12月15日現在、キンシャサの群れは非展示エリアへのひっこしが終わり、新しい環境にもようやくなれてきました。展示エリアでは、サムとサンフジのオス2個体が個室で別々に過ごしており、同居にむけて顔合わせ中です。

今回は飼育場所を交換することにした経緯をお話させていただきます。

マンドリルといえば派手な顔立ちが特徴のひとつですが、霊長類最大の群れサイズをもつことも大きな特徴です。野生では、200個体から多いと1000個体を超えるマンドリルがひとつの群れとして生活しています。また、群れのメンバーは、数個体のオトナのオスと複数のオトナのメスとたくさんのコドモたちから構成されており、オトナのオスの数がとても少ないのも特徴です。

2013年12月当時はJMC歴代最多の18個体のマンドリルをひとつの群れとして飼育し展示していました。オトナのオスが1個体、オトナのメスが5個体、のこり12個体は0才のアカンボウや1~3才のコドモ、8才以下の若いオスでした。日本の動物園ではマンドリルをペア飼育することが多いため、この1群18個体というのは、比較的大きな群れだったといえます。

しかしその後、成長したオスたちが激しく争うことを避けるため、非展示エリアでオスだけのグループで飼育をはじめました。メスの存在がなければ、交尾のチャンスをめぐる衝突がなくなるため、オスどうしでも一緒に生活することができるのではないかと考えたからです。
また、完全なオトナのオスに成長する前のコドモのころから一緒にすごしていれば、何かもめごとが起きたときでも、激しく争わずに済むのではないかとも期待していました。

2017年10月に、ガボン(1998年生まれ)と、ヤッシ(2011年生まれ)、サンフジ(2013年生まれ)、ニコン(2013年生まれ)が非展示エリアで一緒にくらしはじめました。
この時点で展示エリアはオス3個体メス8個体の群れになりました。

※当時のようすはコチラの記事から。「マンドリルのガボンは元気です。

ガボン

2019年4月に、ニースケ(2010年生まれ)が非展示エリアにひっこしました。それまで展示エリアの群れでくらしていましたが、成長にともない雌雄群れですごせなくなったためです。

※当時のようすはコチラの記事から。「マンドリルのニースケは今、ヤッシとニコンと一緒です。


ニースケ


オス3個体のグループ群れ(正面:ニースケ、左:ヤッシ、右:ニコン)


展示エリアの雌雄群は、オス2個体とメス8個体となりました。

※当時のようすはコチラの記事から。「マンドリルのサムに快適な空間を!2」「マンドリルに快適な空間を!


2020年10月、サム(2011年生まれ)が単独飼育となりました。群れから追われることが多くなってきたため、雌雄群から分けることにしました。非展示エリアのオスグループへ導入することも検討しましたが、展示エリアよりも狭い非展示エリアはすでにオス5個体でいっぱいで余裕がありませんでした。


サム

さらに2020年12月、非展示エリアのニースケとヤッシが揉め、体の大きいニースケのほうが肩にけがをおってしまいました。一瞬でも 正面きってあらそったのかもしれません。圧倒的にニースケのほうが体のサイズは大きかったのですが、年下のヤッシがニースケに対して挑戦的になっているようでした。ニースケが10才、ヤッシが9才で、自分の力を誇示する行動がふえてきました。

次に闘争があったときは致命傷を負う可能性も考えられたため、オスたちの今後の関係を検討し、より広い運動場のある展示エリアでの飼育に切り替えることにしました。これまでの非展示エリアの部屋は、1グループにつき外運動場と室内部屋が1つずつしかありません。なにか揉めごとが起きた場合でも、グループから分けて一度クールダウンさせてようすをみたりすることができません。その点、展示エリアには、室内部屋には広い運動場と3つの個室があるため、柔軟な対応がしやすくなります。

そういうわけで、今回のマンドリル展示群れの変更をおこなわせていただきました。ご理解をいただけますようお願い申しあげます。
これからはオトナのオスどうしになるので、もしかしたら、どれだけ広いスペースがあったとしても他のオスの存在を許容することはできなくなるのかもしれません。マンドリルのオスたちが、少しでも快適にくらしていけるように慎重に可能性をさぐっていきたいと思っています。

(附属動物園部 アフリカセンター担当  廣澤 麻里)

2021年12月19日更新
関連キーワード:動物園、アフリカ



サンフジ