三魔女、テケ王国を行く。

可能性
 若いJMCスタッフ新宅さんが指を怪我しながら、「長」のつく仕事をしている年齢のおじさん、おばさんが、何日もかけながら、IKEAハウスをMbaliで作り上げたのは、ここMbaliの可能性を広げたい、と思っていたからなんだと思う。 “可能性”・・・。この間も、聞いた、その言葉。
IKEAハウスの窓を窓にすべく、説明書と首ったけのJMCの部長」のおばさん!?
 この原稿を書いている2018年3月、私はMbaliとは反対方向にある、南米の大国、ブラジルに、ほんの一週間、出張していた。日本からブラジルに出張する、というと、ブラジルという国に着くまでに少なくとも30時間はかかるから、一週間、という時間では、現地に三日くらいしかいられない。海外サバイバル渡航の第一人者であろう岡安直比さんにも、「そんなことやりたくない」と言われてしまった弾丸出張であった。そこで、ブラジルの皆様が言うのだ。

「ブラジルには何でもある。豊かで美しい自然、アマゾン森林、鉱物資源、広大な土地、人的資源。珍しい動物から、レアメタルから、大河から滝まで。おまけに地震もないし、ハリケーンが来るわけでもない。広大な南米の大国で、なんでもあるというのに、なんでこの国には、いまだにこんなに貧富の差があって、金持ちばかりが富を牛耳って、汚職が幅をきかせるのだ?なんとも言えない政治の混迷。この国には、すべての“可能性”があるのに」。その通りである。南米の大国ブラジルには、なんだってある。それなのに、なぜこの大国で、未だに最低限の生活もままならないような人たちがいるのか。この豊かさをすべての人たちが分け合えないのか。
 このブラジル人の嘆きと全く同じ言葉を、コンゴDRCでも聞いた。「コンゴDRCにはなんでもある、広大な自然に、コンゴ森林に、レアメタルに」ボノボもいる。人的資源にも事欠かない。高い教育を受けた層も存在するし、Mbali の周りのペル村もカラ村も、いろいろな方の尽力もあって、小学校は地元にあり、中等教育を受けている人も少なくなくて、フランス語とリンガラ語の読み書きはかなりの人は自由に行える。中間層もこれからもっと育っていくだろう。“可能性”には事欠かない。それなのに、ブラジルの人と同じように、コンゴDRCもまた、元をたどれば植民地時代の負の影響を色濃く背負いながらの、「なんとも言えない政治の混迷」の中にあり、貧困と社会格差の問題の根は深い。他の国のことばかり言っていられない極東の小国に私たちは住まうのであるが、この南米の大国とアフリカの大国が抱えている問題が、あまりにも似ていることに衝撃を受ける。
キンシャサのMMTで共同戦線の”可能性”を探る作戦会議中
 “可能性”はいくらでもあるのに。
 この“可能性”をいかにして伸ばしていけるのか。IKEAハウスの使い勝手がよければ、そういうものを使いながら、Mbaliを、熱帯雨林とサバンナがパッチ状になっているところに見つかったボノボの調査研究の拠点として広げていけないか。あるいは、ボノボをずっとまもってきたテケの人たちとともに、欧米や日本からのエコツーリズムを立ち上げられないか。IKEAハウスはエコツーリズムの際の宿舎には、なり得ないのか。我らがIKEAハウスは、まちがいなく、いろいろな夢を見るきっかけの一つ、では、あったのである。
三砂 ちづる
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2018年3月24日更新
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