マンドリルの単独飼育解消にむけて
 日本モンキーセンターでは、これまでたくさんのマンドリルを飼育してきました。 これまで、オスグループをつくることで群れでくらせなくなったオスが単独飼育にならないようにしてきました。

※これまでのマンドリルの群れ管理については、こちらのページでレポートしてきたので、ぜひ一緒に読んでみてください。
・「マンドリルのガボンは元気です」(2018年12月)
・「マンドリルのニースケは今、ヤッシとニコンと一緒です。」(2019年8月)
・「マンドリルに快適な空間を!」(2019年12月)
・「マンドリルのサムに快適な空間を!2」(2020年6月)
・「マンドリルのオスたちは今、」(2021年12月)

 しかし若いオスたちが性成熟をむかえ、揉めることが増えてきて一緒にくらすことが危険になり、オスたちが単独飼育になってしまいました。そこで、単調な生活になる単独飼育のオスたちに、群れで飼育していたメスを1個体ずつペアリングして、全個体が社会性のある環境で生活できるように飼育グループを変更することにしました。

 ニースケ(オス)は、デイ(メス)との生活を2023年1月から始めました。お尻を向けて挨拶はするけれども、ニースケが近づくとすぐに離れるデイに、ニースケはどうしたものかと困惑しているようすもありましたが、少しずつ緊張も解けて接触を伴う挨拶行動やグルーミングがみられるだろうと観察を続けながら同居を進めていました。しかし、緊張が高まると、ニースケも若さゆえなのかディスプレイをしたりしてデイを追い詰めてしまうこともありました。



ニースケ(左)とデイ(右)


 進展が見られなかったため、繁殖制限のために与えている発情を抑える薬の種類を変更して、デイの性皮がぷくっと腫れるようにしてみました。メスの性皮腫脹は、オスにとっては発情のサインなので、良好な関係づくりが進むのではないかと期待しました。デイの性皮が少し腫れると、ニースケがデイに対して歯を見せて首を振り「こっちへきて」というようなアプローチをする動きが大きくなり、頻度も少し増えました。デイも1mほど近くまで行っておそるおそるお尻を見せるのですが、ニースケが距離をさらに縮めようと腰をあげる気配を察知すると、デイはすぐさま高い場所へ逃げる・・・といったようす。

 デイは元の群れで、αオスとして群れに数年ぶりに戻ってきたキンシャサとの間に子どもをもうけたメスだったので、大人のオスとの付き合い方も心得ているのではないかと考えていたのですが、そのときとは相手のオスの性格も周囲の環境も違います。なかなかデイのニースケへの恐怖心をぬぐうことができないので、デイともニースケとも比較的交流のあったサヤコ(メス)を交えて同居を試してみようと準備をしているところです。

また、かれらの他にも、ヤッシ(オス)とディスコ(メス)のペアと、サム(オス)とイラーリ(メス)のペアが新生活をスタートさせました。こちらの2ペアは同居してまもなくグルーミングが見られました。

 ヤッシもサムも、気持ち良さそうにグルーミングを受けていて、ようやくなかまとの生活が再開できたことに安堵しています。ただ、メスたちにとっては大所帯での生活から体の大きなオスとのペア生活になり、環境の変化に戸惑うことも多いと思いますので、引き続きケアをしていきたいと思います。


ディスコ(奥)にグルーミングされているヤッシ(手前)

 これまでの同居で、個体の性格や環境によって、さまざまな反応を観察することができました。まだ生活が安定していないペアや、これからペアリングをしていくマンドリルもいます。しっかりと観察をおこなって動物たちが安心して過ごせるように慎重にすすめていこうと思います。
(附属動物園部  廣澤 麻里)

2023年3月29日更新
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