三魔女、テケ王国を行く。

大丈夫なのか?
 美穂さんは、若い頃10キロを背負ってチンパンジーを追っていたという。直比さんは、言わずと知れた名うての大型類人猿研究者、あとは隊長に新宅さん。ボノボの森、前にも書いたけど、初心者は私だけ。村で聞き取りをしている武内さんに「よく、いきますね・・・」(関西弁に翻訳すれば、「ええ歳して、初めて森、って、よう、行くわ」、呆れ顔。)と言われたが、誘ってもらった、ということはついていけるだろう、と思って、誘われているわけだから、ついていくしかないのだ。

 直比さんと美穂さんには後から「ちづるさんは大丈夫なのか」と心配していただいていた、と聞いた。だって、普段、和服で過ごしており、モンキーセンターの研究班会議の第一回にも和服で行ったんだから、大和撫子なイメージになっても仕方ない(大和撫子でないことはすぐばれるのであるが、今更この歳で大和撫子もなく、単なる着物着てるオバさん)。でもなんども言うけど、ついていける、と思って誘ってもらってるんだから、ついていくしかない。このような初心者を同行させていただくことには、同行させる側に十分な準備が必要な事はよくわかっているのでただ感謝するしかないのだ。

 正直言って50代の後半にして、コンゴの森に分け入るような経験することになろうとは。人生ってわからない。私は、歩いて通勤したり、天才と思う師について、体をゆるめてからだの本質力をつけるようなトレーニングに精出したりするような、他人から見ると単なる変人としか見えない鍛錬オタクなところはあるのだが、別に、常日頃山歩きしているわけでも、ジムに通ってるわけでもない。何十年に及ぶ知り合いである隊長は、私が終始体育会系であることも、薄ぼんやりご存知だったので、まあ、ついてくるやろ、と、お思いになったんでしょうから、その信頼に応えるしかない。と言いながら、電池切れたり、転んだり、川が渡れなくて足突っ込んだり、帽子なくしたりしながら、迷惑かけつつ、なんとかついていったにすぎない。ぜいぜい。
 ここで怪我したり動けなくなったりしたら、それこそ迷惑千万である。研究者としての自分の体は自分でコントロールしなければならない。

 実際、体調は明らかにアフリカの天気と連動するようになり、気圧が変わったな、と思う日に、武内さんの村の聞き取りについて行った時は、急に血圧下がって気分が悪くなって、慌ててフィールドステーションに帰ったりしたのだが。ともあれ、森では、隊長や直比さんらベテランが、支えてくださったからこそ。皆様ご迷惑おかけしました。
涼しげに、ザンジバルの国立公園でザンジバル・レッド•コロブスを見上げる、の図
 純粋な熱帯林ではないとはいえ、ボノボの住処を見せてもらえたことの感動は永遠のものだ。トラッカーの皆様に、じゃあね、と別れて隊長、新宅さんと3人で帰ろうとしたところ、みごとに迷い、マランタセーの藪で格闘しながら、GPSに頼って、やっと藪から出て、森ってやっぱり怖いんだ、という思いも、経験させてもらった。

 人間ってどこから来たのか。人間って何なのか。抱えた問いは底知れず。
三砂 ちづる
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2018年4月23日更新
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