三魔女、テケ王国を行く。

トは遠くへ行きたいのト
 とうとう来ました最終回。といえば、なぜかいつも期待ハズレな連ドラ。必ずドラマが待っている(とは限らない)野球。終着駅は始発駅なのに同じには聞こえない言葉。ちょっと見はそっくりなのにすご〜〜く違って感じたボノボとチンパンジー。見た目がかなり違うのにすることが似ているチンパンジー&ボノボと、ヒト。

 というわけで、最後にマジな話を。ここまで3人が何度も書いてきた共食(きょうしょく)。もう一つの読み方をするほうのできごとが、じつはアタシがチンパンジーにはまっちゃった理由のひとつでした。それはバブル真っ盛りの1980年代最後の年。初めてのアフリカで、初めて野生のチンパンジーと過ごして1か月ほどたったあの日。とあるおっさん(注:チンパンジーです)が、他の群れから移ってきて最初の子どもを産んだ若いママ(チンパンジーです)の赤ちゃんを突然奪い取り、最終的にはみんなで(チンパンジーです)食べるのをまのあたりにした。いわゆる「子殺しと共食い」。書物では知ってたけど、まさか自分で見るとは。

ありがとう!君たちのおかげで楽しかったよ♡

 違う群れの(かもしれない)血筋を排除、というタテマエはもっともに聞こえる。死んでしまったからには肉、も、チンパンジーにしてみれば合理的。だけど、あの時群れを覆っていたピリピリ感が、ずっと忘れられない。なぜって、あれからいろんな場所でいろんなチンパンジーたちと過ごしたけど、濃度の差こそあれ彼らにはいつもピリピリがまとわりついていたから。笑って遊んでいたかと思うと突然毛を逆立て臨戦態勢に入る。流血の喧嘩は日常茶飯事...
 でも、Mbaliのボノボたちにはそんなピリピリがなかった。たまたまアタシが会ったのが落ち着たグループだったのかもしれないし、過ごした時間が短すぎたのかもしれない。けどとにかく、ボノボとチンパンジーは思ってたよりずっと違ってた。

 といってね、ヒトは凶暴な一面をチンパンジーと、エッチな一面をボノボと共有しているなんて、単純な仕分けはアタシャ嫌ですよ。ボノボやチンパンジーの心と遺伝子に何があるのかなんて、まだ誰も本当には知らないんだから。

 というわけで、MMTファームの部屋に散乱した私物を手当たりしだいにトランクに詰め込み、頭の中はどうしようもなくとっちらかったまま飛行場に駆けつけ、ちーさまや上品武内氏と短い再会と別れの挨拶をし、森やサバンナや蛇行するコンゴ川をぶんぶん飛び越えて、大都会キンシャサへ降り立ってもまだ頭が詰め込み状態で、パスポートを入れたリュックをポーターに持って行かれ、空港係官にからまれ、松浦パパに助けてもらい、この旅最後の“共食”をして、翌日無事にアディスアベバ乗り換え香港経由成田行きのエチオピア航空機に乗ったのでございます。

 高度1万メートルから見る地球は、いつも儚げだ。ひとりひとりに名前があり、自我があり、互いに繋がりを持ち、傷つけあったり助け合ったりして、億の人々が暮らしている。その多くが存在すらも気にかけたことがないボノボやチンパンジーやゴリラやオランウータンたちも、失われゆく森で、食べたり、笑ったり、争ったりしている。

 進化は現在進行形だから、全ての種が生き残れてしかもみんながハッピー♡なんてありえない。それに、今この瞬間にも巨大遊星が太陽系目指して飛んでるかもしれないし、氷河期とか地磁気の逆転とか突然変異したウィルスとか、いきなり“2点ビハインドでロスタイム残り1秒”になっちゃう材料なんてゴマンとある。それでもどういう未来にしたいのか、あーだこーだと議論し、あがくのが人間。だから人生は楽しいんだよね。

 つうわけで、アンデッドもキョンシーも実はアウト。ちゃんと生きてるうちに思いっきり悩んでベタに行くべ。それでは、いつかまたどこかで。ばいちゃ♡

最後の脳内BGM:ジョン・レノンの“イマジン”
想像力を信じられなくなったとき、ヒトは袋小路なんだろうな
中村 美穂
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2018年7月11日更新
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